【厩務員生活・第二章】リフレッシュ放牧を経て新天地で新たな出会いと再会

10/16 (金) 厩務員・国枝栄の調教日誌

沖縄旅行でリフレッシュ
思わぬ再会と貴重な体験

8月いっぱいで小島茂之厩舎から「退厩」し、1か月と少しの間「短期放牧」してきた。一番は家族と旅行するというのがあったんだけど、1週間ほど沖縄に行ってきたんだ。

以前、身内の結婚式で行ったとき以来だったけど、天気も良くてそこまで暑さもなく快適に過ごせたね。美ら海水族館に行ったり、ショッピングを楽しんだりといいリフレッシュになったよ。その中で、岡部幸雄元騎手が手掛けている「うみかぜホースファーム」にも行ってきたんだ。

日本在来馬でもある与那国馬の保護・普及のための施設なんだけど、たまたま自分の大学の後輩もそれを手伝っていたのもあって、行く前にアポを取って訪ねてみた。そしたら、長い白髪の仙人みたいな岡部さんが出てきてね(笑)。ちょっとびっくりしたけど、話してみたら以前と全然変わりなくて、元気いっぱいで馬と接していたよ。

そのとき少し天気が悪くなったので、与那国馬に乗って海に入ることは叶わなかったんだけど、森の中の散歩道のようなところを歩いたり、家族も跨らせてもらって楽しい時間を過ごしたよ。体高が1メートルほどしかない小柄な大人しい馬だから、子供でも怖がらずに乗れるみたいだね。貴重な経験だったよ。

▲日本在来種で与那国町の天然記念物に指定されている与那国馬
あとはろくろを回して、陶芸体験なんかもやってきた。着色や焼くのなんかは向こう任せだったけど、土を捏ねて整えて伸ばして…なんかをやって、いいお茶碗が出来たんだ。今はそれでご飯を食べているけど、いいデキだったからご飯も美味い気がする(笑)。

弟子からの呼び出しで
奥村武厩舎のヘルパー入り

と、まぁ、そんな感じで沖縄旅行を楽しんでいたときに、奥村武師から直接電話がかかってきてね。

「今、ウチの厩舎で怪我人が出ていて人が足らないんです。もし良ければ手伝ってくれませんか?」と。小島茂之厩舎を出たあと、まだ何も行くアテも決まってなかったら、俺で良ければって感じで返事をしたんだ。

▲馬上で奥村武師と言葉を交わす国枝厩務員
奥村武師といえば、自分が調教師時代の2003年に調教助手として入ってきて、2014年まで所属していた人物。いわば「弟子」にあたるワケで、テレビ東京の「ウイニング競馬」に出演した際に「弟子に弟子入りします」なんて言ったんだ。

自分の弟子の厩舎で、補充員(ヘルパー)として働くことにどう思いますか?なんてそのあと周りに聞かれたんだけど、ためらいとか抵抗とかは何も考えなかったね。

お互いによく知っているから、むしろ仕事はやりやすいんじゃないか、と思ったくらいだよ(笑)。皆んなの前では「テキ」と呼んでいるけど、それもまったく気にならない。馬に携われば、俺はそれでいいからね。

担当馬2頭の調整状況
バーンユアハートとヒズマスターピース

話がまとまり、いざ奥村武厩舎に「入厩」したのが10月14日(水)。そこでまず担当したのが、2歳の新馬のバーンユアハートという馬。460~70キロの中型馬だけど、まだ2歳馬らしいヤンチャっぽさがあって、ドッシリ構えていないところはあるね。

ただ、この前の毎日王冠で3着になったレディネスの弟という血統だし、初日に坂路で62秒4~44秒8~14秒4と軽いところを乗ったら、なかなかいいフットワークでキャンターの感じもいいんだよね。

翌日の15日にはウッドで自分が乗って71秒3-55秒6-40秒9-13秒1と時計を出したけど、自分に1か月ちょっとのブランクがあったでしょう。だから直線ではこっちがバテちゃってね。

馬は全然、ケロリとしていたし直線でもう少し追って終いを伸ばしたかったんだけど、ビシッと出来なかったんだよ。これから徐々に取り戻していかないとダメだね。

馬のほうは既にゲートも受かっているし、調整自体は順調だから、あとはジョッキーを乗せてビッシリやって、デビューに漕ぎつければいいね。追ったあとにもっと良くなっていきそうだよ。

もう1頭、14日の午後に放牧先から帰ってきて担当したのは、自分が調教師時代に管理していた3歳牝馬のヒズマスターピース。まさか、自分が手掛けていた馬が回ってくるとは!?と思ったけど、これは俺じゃないと味わえないよなぁ、と嬉しいというか楽しいというかそんな感情だった。

▲ヒズマスターピースと国枝厩務員(10月14日撮影)
16日(金)の朝に坂路で61秒2~45秒7~14秒5と軽いところを乗ったけど、ものすごく乗りやすくて体幹やバランスがシッカリしていて、芯が入っている感じ。

さすが、GⅠに出走して重賞でも3着に入るだけのことはあるよね。頭が低くて、地面をなめていくような走りでグイグイ進んでいくし、だから逃げてスピードを生かす競馬がいいのかと思ったよ。

実際、調教師時代に担当者を通して聞いた話と、自分が直接触ってみる感じが微妙に違うのが面白いよね。大人しくてすごく扱いやすいんだけど、500キロを超える馬体重で力強さもあるので、そこだけ見ると牝馬と思えないくらいで。

この夏の札幌ではもうひと粘りあれば、という競馬が続いたようだけど、2勝クラスでもペースや展開、相手関係ひとつで勝負になると思っているよ。

充実の「放牧」期間を経て
再び競馬の現場へ

まぁでも、振り返ると「短期放牧」中も、美浦村で行われた「UMAフェスタ」でトークショーをしたり、先日(13日)の東京競馬場では「サンクスホースデイズオークション」を行ったり、グリーンチャンネルの公開収録に出演したりと、何だかんだノンビリはできなかったけど…。

宮城県のほうに行って温泉に浸かったり、ようやく天気も良くなってきたからゴルフも行けたしね(笑)。十分、リフレッシュはできた。またこれから、馬に向き合っていきますよ。

(執筆:守屋貴光)


守屋貴光
情報トランスポーター

守屋貴光

情報 美浦 取材

「視点を替えれば真実へ近づく。競馬も芸能界も同じです」──かつて某・有名芸能誌で毎週のようにスクープをスッパ抜いていた根っからの情報屋。競馬界に転身した今となっても"ウラ"を読むクセが抜けず、真の情報を求めて現場を奔走する。現在は厩務員として過ごす元調教師・国枝栄をはじめ、GⅠ常連陣営の取材担当も歴任している。 (担当厩舎:蛯名利、大竹、栗田徹、黒岩、鹿戸雄、高柳瑞、畠山吉、松尾)



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※次回は10月23日(金)更新を予定しています。