【スプリンターズS】極上の初速とトラックバイアスを追い風に最速ヒロインが初戴冠!

09/27 (日) 妙味解析!回顧ファイル
FILE:9/27(日) 中山11R

スプリンターズS(GⅠ)

注目の先行争い。先手を取ったのはやはりピューロマジックだったが、『争い』というような激しいものは起きず、楽な手応えで単騎逃げに持ち込む。前半3Fの通過は33秒6。馬場を思えば速めの数字だが、手応えを見ての通りピューロマジックにとってはマイペース。

直線に入る頃までにジワジワと番手集団との差が付いていき、最後の200mこそ12秒6と失速したが、そこまでに稼いだリードを守りクビ差で凌ぎ切った。②着には好位3番手の内から伸びたワールズエンド、ハナ差の③着に馬込みをタイトに抜けて伸びたサウンドモリアーナが入った。

今開催の中山は雨に祟られた影響なのか、非常に特殊な馬場傾向が出ていた。後方から外を回る馬が台頭するレースはほとんどなく、普通であれば荒れ馬場で苦しくなるはずの内前が何故か圧倒的に有利な状況。最終日になってもその傾向は根強く、このバイアスを味方に付けた3頭が上位を占める結果となった。

一番人気のパンジャタワーは好位外目を追走したものの、直線を待たずして余力を無くして⑮着。三番人気フリッカージャブは2番手追走から勝負所では進みが悪くなり、伸び切れぬまま⑫着に沈んだ。ひどく荒れた馬場ゆえに力を出し切れなかった馬は他にもいそうで、この辺りはレースを精査する際にトラックバイアスと同様に考慮すべき要素と言えるだろう。

勝ったピューロマジックがトラックバイアスに乗ったのは間違いない。ただ、このメンバーでも楽々とその形を作れるのがこの馬最大の強さでもある。陣営も逃げることになると思いつつ、もしもの際の対処は考えていたと思うが、結局は各馬が押して行く中を馬なりでハナを切ってしまうのだから恐ろしい初速だ。

『この馬と競ってはマズい』との意識を他陣営に植え付けていること自体が勝因の一つであり、見方によっては初手の段階で勝負は決していたのかもしれない。様々なレースを経験して2年連続⑧着からの戴冠。今夏の充実からも分かるが、ようやく完成の域に達したと言って良いだろう。

ワールズエンドは安田記念と同様に一歩目は速くなかったが、勢い的にはハナにも行けそうな二の足で好位を取り切り、直線では勢いを失くしたフリッカージャブを最内の最短距離から上手くパスできた。そこからも最後までしっかり伸びているし、競馬としてはほぼ満点の立ち回りと言えるだろう。初めての1200mでこのメンバーとこの馬場でこれだけしっかり走れるのだからスプリンターとしての資質は相当に高い。今後が非常に楽しみ。

③着サウンドモリアーナは序盤こそ中団だったが、馬込みの中からジワッとポジションを押し上げて600m過ぎにはワールズエンドのすぐ外の位置に。眼前を走るフリッカージャブをパスするのに外にいたペアポルックスと何度か馬体をぶつける場面があったが、何とか進路を確保すると最後まで渋太く脚を伸ばしてきた。

僅かにワールズエンドに及ばなかったのは、2頭分ほど外を回った分と、ペアポルックスと馬体が接触した分もあるだろう。道悪馬場でも道中の推進が良かったのはダート2勝馬で力の要る馬場を苦にしないという側面によるもの。時計勝負には引き続き課題を残すが、状況さえ整えば積極的に評価を上げて良い馬と言える。


─次はココに注目!─
1人気4着
スターアニス


久々の1200mが古馬G1戦ということで流石に序盤には後れを取ったが、後方の馬込みというタイトなポジションでも気持ちは途切れず、直線坂下でようやく外の進路を見出すと一番の勢いで坂を駆け登ってきた。

馬齢によるアローワンスがあったとはいえ、差しが全く利かない馬場状態を思うと全出走馬で一番強いと言えるくらいの立ち回り。やはりスプリント性能には相当なものがある。

良馬場の方が更なるパフォーマンスアップが見込めるだけに、近い将来でスプリント路線を背負う馬となる日が来るだろう。

(執筆:久光匡治)


久光匡治
二天一流ホースマン

久光匡治

調教 美浦 取材
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従来、専門家がその道一本で務めあげる取材と調教。その双方を股にかけ、場所を選ばず活躍する二天一流ホースマンとは彼のこと。馬・人の両側面からあらゆる可能性を探り、時には上位人気馬を印から切り捨てることも辞さない予想スタイルはまさに天衣無縫。優馬の産んだサムライが、今日も未踏の道を征く。 (担当厩舎:青木、奥村武、粕谷、加藤士、萱野、平岩、堀内、室井、和田郎)