トゥザファイナルと掴んだ初勝利!厩務員として駆け抜けた充実の5か月を経て、しばしの「短期放牧」へ

08/28 (金) 厩務員・国枝栄の調教日誌

8月22日(土)の札幌1Rで、トゥザファイナルが初勝利を挙げてくれた。

▲道中2番手から追走
直線で力強く抜け出し、半馬身差の勝負を制す
厩務員になった自分にとっても初の勝利だったし、本当に嬉しかったね。調教師時代とは違い、自分で手入れをして仕上げてきた馬だったので、また別の喜びがあったよ。

ルメール騎手の巧みな手綱さばき
今後の夢が膨らむ待望の初勝利!

前日の21日(金)に函館競馬場から札幌競馬場に移動して、1泊してレースに臨んだけど、厩舎では程よい気合い乗りという感じ。一応、パドックではもうひとりのスタッフとの二人曳きをしたけど、初戦時よりやや気が入っていたかなという程度。曳くのに苦労はしなかったよ。

ルメさん(ルメール騎手)には「大型馬でパワーがあるよ」くらいだね、話したのは。あれだけのジョッキーなので、余計なことを言わないほうがいいだろうなと思ったから、そこまで喋らずに返し馬に向かった。

▲大型馬らしい貫禄を見せるトゥザファイナル
なお当日の馬体重は550キロ
いざレースでは、スタート直後に躓き気味ではあったんだけど、さすがはルメさんだよね。慌てず出していって、巧くリカバーしてスッと先行できたから。

その後の道中でもリラックスして走れていたし、直線でも早目に抜け出してきたから「ヨシッ!」と思っていたけど、最後の最後で道中シンガリにいた馬が飛んできたでしょう。

ギリギリ凌いでくれたけど、あの勢いならあと10mもあれば替わっていたかもね。でも、大きな1勝だった

これで今後の選択肢が広がったし、無理矢理使うようなローテーションも組まなくて良くなったから、やはり1着と2着ではかなりの差があるよ。よく勝ってくれた。

ルメさんは記者たちに「これでダービー行きましょう!」とかリップサービスしてくれたみたいだけど、まぁ血統や走りを見ても「(大井で行われる)東京ダービーのほうだろうね」とかスタッフらと話していたんだ(笑)。

▲ルメール騎手×トゥザファイナル×国枝厩務員
貴重な3ショット!
その後の口取りでは、馬主さんや関係者と写真を撮ったあと、カメラマンのリクエストでルメさんとトゥザファイナル、自分の「3ショット」で口取り写真を撮ったが、なかなか珍しい光景だったね。でも、自分にとってのいい記念になったよ。

暑さ吹き飛ばす恵みのシャワー
短期間で見せた心身の成長

Instagramのほうで投稿されたが、口取りが終わって厩舎に引き上げる前に、上からシャワーが出る場所で馬を冷やしてあげた。馬にとってみると、上からくる水をイヤがることもあるので、自分も一緒に浴びてあげたんだ。


自分が濡れずに曳くのは難しかったし、そこを気にしても…と思った。何よりあの日の札幌は暑かったからね。自分にとっても丁度いいクールダウンになったよ(笑)。

以前、トゥザファイナルのレース後の様子をこの連載で話したが(No.12)、そのときはすごくイレ込んでいて大変だった。でも、今回はそんなことはなく、多少興奮していたくらいだったんだよ。

一度、競馬を経験したこともあると思うけど、そもそも今回は競馬の前の段階で精神的な余裕があったんだ。函館に行って最初に感じたことだったけど、全体的に落ち着いていて体もシッカリしていたから、この短期間で大人になったんだろう。目つきや雰囲気に余裕が感じられたからね。

▲初戦を経てますます成長
逞しさ増した姿で手繰り寄せた勝利!
心身ともに成長していいほうに変わってくれたから、それもあっての勝利だったんじゃないかな。それを間近で見られて、本当にいい経験になったよ。

無事に走り切ったデビュー戦!
暑熱対策の効果も実感

同じ日の5Rには、ジャストピーチーもデビューした。トゥザファイナルのレース後の手入れをしたあと、すぐに装鞍してパドックも曳いたけど、特に問題なく出来たね。いつものジャストピーチーより少しイレ込むくらいに感じたけど、まぁ許容範囲だったし普通に周回できた。

▲岩田望来騎手を背に返し馬へ向かう
ジャストピーチー(結果は12着)
ただ、レースではやや促しながらの追走で、勝負所で早々と苦しがってしまった。普段から乗っていても、バネやスピードの面で物足りなかったし、終いの余裕のなさがどうかと思っていたから、調教と同じ感じのレースではあった。

それでも、引き上げてきて脚元や体調面で問題がなかったし、函館に戻っても反動は出ていなかったのが何より。トゥザファイナルのように、いい方向に成長していって欲しいね。

今回、暑熱対策で装鞍所の集合が40分前(通常は60分前)になり、パドックの周回時間も短縮されたのを初めて経験したが、やはり人馬への負担は圧倒的にラクだよね。今回は2周ちょっとで騎乗命令が出たように思うが、いつもは10周くらい曳いているから。

連載No.5で言ったけど、危険防止の観点や作業効率の面でもこのほうが断然いいし、夏場だけではなくこれを続けていって欲しいと思ったよ。

出会いに満ちた函館出張を終えて
ひと区切りの「退厩」と次なる一歩

あとほかに、レース当日にはコビさん(小桧山元調教師)が来ていたから、久々だったしレースの前後で色々と話をしていたんだ。勝った直後には「おめでとう!」と声をかけてもらった。

まぁ、コビさんの目的は自分に会うことではなく、知り合いを関係者に紹介することだったようだから、知人を見つけては話を取り持っていて、人と人を繋いで競馬業界の話なんかをしていたよ。

▲小桧山元調教師と満面の笑みでパシャリ📸
自分も、その日の11Rにトゥザファイナルの半兄のスパークリシャールが出走していた(2着)から、その生産者や牧場関係者とも会って話ができた。やはり、競馬場に行くと久々の再会や色んな出会いがあるからいいよね。

そんな感じで、充実した函館出張をして、26日(水)に美浦に帰ってきた。一応、持って行ったゴルフバッグの出番がなかったのが、やや心残りかな(笑)。そこまでの時間が取れなかったんだけど、まぁまた次の機会の楽しみに取っておくよ。

ただ、4月から約5か月間、補充員(ヘルパー)として小島茂之厩舎で働かせてもらったが、この夏競馬をひと区切りにして一度「退厩」することになった。

家族のこともあるし、一息入れて旅行もしたいので、とりあえずここまでというのは前々から考えていたんだ。でも、1~2か月休んだら、また調教師会に取り持ってもらいヘルパーとして他の厩舎を紹介してもらう予定ではある。

だから「短期放牧に出た」とでも思ってもらえばいいかな(笑)。

完全に辞めるワケではないし、ちょっと聞く限りでは受け入れ先の厩舎もまだあるようだから、空いている所に行ければいいかなと。それが決まるのはまだ先だけど、その際はまたここで報告させてもらいますので。


▲今朝(28日)の元気一杯トゥザファイナル
首筋を撫で、改めて愛馬を労る国枝厩務員
(執筆:守屋貴光)


守屋貴光
情報トランスポーター

守屋貴光

情報 美浦 取材

「視点を替えれば真実へ近づく。競馬も芸能界も同じです」──かつて某・有名芸能誌で毎週のようにスクープをスッパ抜いていた根っからの情報屋。競馬界に転身した今となっても"ウラ"を読むクセが抜けず、真の情報を求めて現場を奔走する。現在は厩務員として過ごす元調教師・国枝栄をはじめ、GⅠ常連陣営の取材担当も歴任している。 (担当厩舎:蛯名利、大竹、栗田徹、黒岩、鹿戸雄、高柳瑞、畠山吉、松尾)



★次回は9月4日(金)以降に更新予定!