【ファンタジーS】牝馬らしからぬ勝負根性/異例のスローペースで割を食った一頭【天皇賞秋】

【ファンタジーS】牝馬らしからぬ勝負根性/異例のスローペースで割を食った一頭【天皇賞秋】

11/02 (日) 妙味解析!回顧ファイル
FILE:11/1(土)京都11R

ファンタジーS(GⅢ)

牝馬らしからぬ勝負根性

来年に向けスタートしたばかりの牝馬クラシック路線で比較材料が少なく、今後に向けて必見のレース。気性の違いが明暗を分ける競馬にもなった。

返し馬から折り合いを欠く仕草を見せていたポペットは鞍上の意図もあったか一完歩遅れてのスタート。人気のフェスティバルヒルとメイショウハッケイも1馬身ほど遅れてのスタートとなった。

内からハナを奪ったのはマーブルパレスでそれに並びかけたのがメイプルハッピーとフルールジェンヌの7枠2頭。この3頭が引っ張る展開になった。

好位のインで脚をためていたブラックチャリスとその一列後の外にショウナンカリス。
出遅れた人気のフェスティバルヒルとメイショウハッケイは後方でそこから少し離れた位置をポペットが追走。

直線に向くと、ポカッと開いた内をついて完全に抜け出したのがブラックチャリス。ゴール寸前まで粘っていたが、馬群を割って追い込んできたフェスティバルヒルが、2歳牝馬らしからぬ勝負根性を見せて差し切り見事重賞初制覇。

外から6枠2頭が併せ馬で追い上げ、2着争いは混戦になったが、ショウナンカリスが競り勝って賞金を加算する連対を確保。

クビの上げ下げで競り負けたメイショウハッケイが3着。スタートの後手が響いたが、外を回って追い上げ能力の高さは示した一戦にはなった。

4着には勝ち馬からクビ、ハナ、クビ差とゴール寸前まで頑張ったブラックチャリス。結果的に後ろにいた馬たちが上位に入線するなかで、前に行った組で粘ったのはこの馬1頭。落鉄しながらも粘り強さが光るレースぶりだった。

─次はココに注目!─
5人気6着
ポペット


スピードがあるのは確かだがこの距離でも道中は折り合いを欠く始末。離された後方を追走しながらも上がり3F32.8秒の末脚を駆使。勝ち馬から0.2秒差まで差を詰めた内容から確かな能力は感じられた。

現状ではスプリント戦でこそのタイプで、短い距離を使ってきたら大きく狙ってみたい。

(執筆:持木秀康)

関西トレ
優馬1面の名奉行 優馬

持木秀康

栗東 調教

栗東の調教班に所属。優馬の1面にてコラム「オフコース 持論(もちろん!)」を掲載、2016年天皇賞・春にてカレンミロティック(13番人気2着)に単独◎を打ったことは現在でも語り草。推し馬サロンでは関西トレセン捜査班にて予想を提供。

FILE:11/2(日)東京11R

天皇賞秋(GⅠ)

異例のスローペースで割を食った一頭

1000m通過62.0秒

戦前にこの超スローペースを予見できた人がどのくらいいただろうか。

パドックから返し馬まで落ち着き払った気配のメイショウタバルは、ゲートが開いてからもムキになることは無く折り合っての逃げ。番手には大方の予想通りホウオウビスケッツ。他の各馬に大きな立ち遅れも無く、前の隊列が決まってからはそれぞれが出たなりの位置で動かず、直線に向くまで膠着状態が続いた。

残り600mからはヨーイドン。

一旦は好位からタスティエーラが先頭に立つが、中団から一気にマスカレードボールが台頭。続いてミュージアムマイル、内からはジャスティンパレスも伸び、3頭での決着となった。

ラスト3Fは10.9秒-10.9秒-11.1秒という高速ラップ。斤量の軽さや各馬のキャラクターが結果に反映された印象で、ワンツーを決めた3歳馬2頭にとっては底力の問われぬ中身の軽いレースになった点は追い風となっただろう。

3着ジャスティンパレスと5着アーバンシックは2000m超の距離で実績ある2頭。本来なら追走に急かされる距離のはずが、超スローの流れで労せず脚をタメられたのが結果にも繋がった。

4着シランケドは上がり31.7秒の鬼脚を披露。自身の武器を最大限に活かせる展開になったが、この脚を使っても届かないというのが今年の天皇賞秋の本質と言っても良い。

数字だけで測るものではないだろうが、今年の勝ち時計1.58.6秒は、スローペースの凡戦と評された昨年の天皇賞秋で最下位の入線も叶わない数字である。

真に強い馬が勝ったのかどうかは、これからの競馬で証明されていくことになるだろう。

─次はココに注目!─
10人気7着
セイウンハーデス


そもそも向かないヨーイドンの流れ。気持ちが散漫だったとの鞍上回顧もあったが、外枠からの発走も影響してか何も出来ないままレースが終わってしまった。

強かったエプソムカップのように地力で勝負したい馬が、今回は自分から動けるような位置が取れず、向かない流れを周りに合わせすぎたきらいが強い。

それを思えば0.4秒差の7着は悪くないか。

今回もしっかりとCWでの強い追い切りを課せていたように脚元の経過は順調のようだし、近年の最強世代なのは間違いないイクイノックスやドウデュースと同世代の1頭。

常に調整過程に目を光らせる必要はあるが、そこさえ順調であれば、まだまだ出番はあると覚えておきたい。

(執筆:久光匡治)

久光匡治
二天一流ホースマン 優馬

久光匡治

美浦 取材 調教
YouTube出演中

従来、専門家がその道一本で務めあげる取材と調教。その双方を股にかけ、場所を選ばず活躍する二天一流ホースマンとは彼のこと。馬・人の両側面からあらゆる可能性を探り、時には上位人気馬を印から切り捨てることも辞さない予想スタイルはまさに天衣無縫。優馬の産んだサムライが、今日も未踏の道を征く。