【菊花賞】人馬ともにマックス!/大舞台を意識させる一頭【アルテミスS】
菊花賞(GⅠ)
人馬ともにマックス!
皐月賞とダービーの上位馬が不在で混とんとしたメンバー構成になった今年の菊花賞。先週に引き続き週末の雨にも各馬が苦しまされるスタートとなった。
逃げる事も予想された武豊騎手のマイユニバースが控える形となり単騎でハナを切ったのはジーティーアダマン。外からエキサイトバイオが2番手に上がってくる展開。
大きな動きもなくそのまま4コーナー手前では馬群がほぼ一段となる大混戦の中で外を回って早めに先団に取り付いたのはエネルジコ。そのまま先行集団を飲み込み各馬を振り切って見事に勝利。ルメール騎手の菊花賞3連覇に花を添えた。
青葉賞を勝った後にダービーを見送り秋に備えた陣営の思惑がハマった一戦だし、早めに栗東に入厩しこちらの水も合った様子。先週に引き続き鞍上の積極策が功を奏した一戦になった。
2着に春は骨折の影響が残り全能力を発揮できなかったエリキングが入線。後方から外を回って追い上げたが完全に抜け出したエネルジコまでは届かずゴール。それでも何とか連対を死守した点に力のある所は証明できた。
3着には早め先頭から渋太く粘った13番人気のエキサイトバイオが激走。長距離適性を活かしてスタミナの豊富さを見せつける一戦になった。
そのエキサイトバイオをゴール前ハナ差にまで追い詰めたゲルチュタールが4着。近年の王道となる日本海Sからのステップだがここまでが精一杯だった様子。
結果的に道中外を回って追い上げた馬のワンツー。雨で傷んだ馬場を考慮した馬たちに幸運が持たされるレースになった。
─次はココに注目!─
9人気5着
レッドバンデ
直線に向くと3着エキサイトバイオの内を突き伸びかけるシーン。雨が降る馬場で外を回った各馬に有利に働くコンディションのなか力を示すレース振りは印象的なものだった。
パドックの気配も抜群に良かったし次走2勝クラスならキッチリ勝ち上がれるハズ。来年春の天皇賞まで駒を進められれば厄介な存在になりそう。
(執筆:持木秀康)
持木秀康
栗東の調教班に所属。優馬の1面にてコラム「オフコース 持論(もちろん!)」を掲載、2016年天皇賞・春にてカレンミロティック(13番人気2着)に単独◎を打ったことは現在でも語り草。推し馬サロンでは関西トレセン捜査班にて予想を提供。
アルテミスS(GⅢ)
大舞台を意識させる一頭
ハナを切ったのは1番人気のマルガ。
形としては押し出されての逃げだったが、変に抑え込まず馬のヤル気を優先したことで、2番手以下を少し離す形になった。
3F通過は35.2秒。朝から雨を貰った稍重馬場を思えば、幾らか締まった通過だが、マルガから3馬身ほど離れていた後続各馬にとってはしっかり脚が溜まる流れでもあったか。
粘り込みを図ったマルガは残り200mで一杯。代わって先頭に躍り出たのは、道中3番手から伸びたフィロステファニ。各馬が仕掛ける中、追い出しをギリギリまで待つ余裕もあり、結局、ノーステッキのまま後続に1馬身3/4差を付ける快勝となった。
テンションが高く、まだ全体に幼さを見せながらの圧勝。兄に皐月賞馬ソールオリエンスを持つ良血だが、体付きや気性の若さはこれから整ってくる、所謂『伸び代』の要素であり、現段階でのこの勝ちっぷりからすれば、大舞台を意識させる一頭となったのは間違いないだろう。
勝ち馬の直後から脚を伸ばしたミツカネベネラが9番人気の低評価を覆して2着。比較的馬場か良い外を走れた利点はあるが、距離延長で坂も増えた状況で、新馬戦と変わらぬ脚力を発揮した点は評価するべき。なかなか良い瞬発力がある。
ソダシの妹で注目を集めた白毛馬マルガは最終的に5着に失速。速いと言うほどのペースではなかったが、現状は気持ちが前に出過ぎている感があり、やや走りが一本調子。新馬圧勝の内容から素材は確かなだけに、これからの成長を待ちたい。
─次はココに注目!─
3人気3着
タイセイボーグ
鞍上が自らのミスと発言していたが、スタートの後手は許容範囲だったように思う。直接的な敗因としては、雨で馬場が緩んだ中、外へ持ち出せず内を突くしか無かった点ではないだろうか。
パトロール映像を見ての通り、道中から各馬が内を空けて走る馬場状態。直線で隊列の外を労せず選択できた上位2頭と、馬場の悪い所を通らざるを得なかったタイセイボーグとの差は大きく、秀でた脚力が武器である自身のキャラクターを鑑みれば尚更のこと。それでいてあの着差であれば、フラットなバイアスで走れていれば、相当際どい勝負ができていたはずである。
今後、ステージが上がればスタートという課題もついて回るだろうが、ポテンシャルは既に重賞を勝てるレベルに達しているのは確か。額面上で人気になる馬でもないだけに、次がもし阪神JFであっても狙うだけの価値がある馬に思える。
(執筆:久光匡治)
久光匡治
従来、専門家がその道一本で務めあげる取材と調教。その双方を股にかけ、場所を選ばず活躍する二天一流ホースマンとは彼のこと。馬・人の両側面からあらゆる可能性を探り、時には上位人気馬を印から切り捨てることも辞さない予想スタイルはまさに天衣無縫。優馬の産んだサムライが、今日も未踏の道を征く。


