【秋華賞】鞍上のファインプレー/スローで折り合い欠く馬も【富士S】
秋華賞(GⅠ)
鞍上のファインプレー
関西地方は週中からスッキリとしない天気が続き土曜日には雨もパラついていたが何とか良馬場でスタートできた今年の秋華賞。
各馬ほぼ互角のスタートを切りケリフレッドアスクの西塚騎手が気合を付けて先頭を狙うも二の脚の違いでハナを切ったのはエリカエクスプレス。
2コーナーを過ぎてバックストレッチに入り中団から早めに先頭に並びかけたのはルメール騎手のエンブロイダリー。これが逃げた武豊騎手が作る絶妙なペースを判断してのファインプレーになった。
そのまま直線に入るとエリカエクスプレスが後続を引き離して完全に抜け出す形。それでも一完歩ずつ着実に詰め寄ってきたエンブロイダリーがゴール前で差し切って優勝。
桜花賞当時と同様に今回も栗東に入厩しての調整と水が合っている様子で見事2冠を手中に収めた。
2着にはそのままエリカエクスプレスが入線と結果的に前にいた名手2頭の決着。ペースが大きな命運を分ける一戦となった。
3着には唯一後方から伸びてきたパラディレーヌ。レース展開を考慮するとこの馬が一番強い内容だったと言えるもの。ローズSで不利を受け結果が残せなかった鬱憤を晴らす走りに手ごたえが感じられた。
1番人気のカムニャックは4コーナー手前で手応えがなくなり16着に大敗。8月上旬から栗東で乗り込みを開始と久々快勝の反動はないハズで現時点では敗因は不明だが何もなかった事を祈りたい。
─次はココに注目!─
9人気6着
ビップデイジー
阪神JFではアルマヴェローチェと2頭で外から併せ馬のように伸びて2着を確保する力を見せていた同馬。
今日も道中外々を回り直線では一旦3着に浮上したがゴール前には勢いがなくなってしまった。
この内容から距離が長かった事は明白で得意のマイルに戻れば巻き返しは必至。
まだまだ成長が見込める馬で年が明ければ大きいところを狙っても良い実力を秘めている。今後も追いかけたい一頭だ。
(執筆:持木秀康)
持木秀康
栗東の調教班に所属。優馬の1面にてコラム「オフコース 持論(もちろん!)」を掲載、2016年天皇賞・春にてカレンミロティック(13番人気2着)に単独◎を打ったことは現在でも語り草。推し馬サロンでは関西トレセン捜査班にて予想を提供。
富士S(GⅡ)
スローの上がり勝負に
戦前から何が逃げるか不透明ではあったが、押し出されたとはいえ中距離でキャリアを積んだグリューネグリーンが初のマイルでハナに立つのだから流れは言うまでもなく遅くなった。
前後半の800mは46.7秒-45.0秒と最近の東京らしい後継ラップの上がり勝負。3F33.4秒のレース上がりでは、前々で決まったのも当然と言えば当然の結果だろう。
2番手から押し切ったガイアフォースは位置取りに先入観を持たず番手にエスコートした横山武史騎手の判断が素晴らしかった。元々がGⅠでも上位に食い込める決め手を持った馬。斤量差がある実績馬に対して立ち回りでも優位に立てたのだから、この結果も必然と言えるだろう。
ジャンタルマンタルは相手にプレッシャーを掛けつつの正攻法で勝ちの形は作れていたが、斤量差や遅い流れの影響もあり半馬身及ばずの②着。先を見据えた仕上げを思えば、次走へ期待を抱かせる良い前哨戦とはなったか。
③着ソウルラッシュも評価はジャンタルマンタルと同様。骨折明けで59キロの状況からすれば内容に恥部は無く、本番への期待が高まる走りだった。
4コーナー二桁番手から④着まで差し込んだジュンブロッサムは、流れを思えば中身のある内容。昨年勝利時に負かしたソウルラッシュと着順は入れ替わったものの、クビ差であれば能力の減退が無い確認は取れたと言って良さそうだ。
─次はココに注目!─
2人気10着
マジックサンズ
斤量面なども考慮され2番人気の高い支持を集めたが、前半の早い段階でガツンと引っ掛かってしまい万事休す。案の定、直線は全く反応できなかった。
ただ、好走した札幌2歳Sや皐月賞、そしてNHKマイルCの3戦は全て底力が問われるタフなレースであり、そもそも今回のようなスローのヨーイドンは、自身のキャラクターに全く合わない展開。
例え引っ掛かっていなくても怪しかった疑念も残るだけに、この一戦だけで評価を下げるべきではない。
要は、レースの質が上がる大一番向きの馬との見立てで、このままマイルCSへ向かうようなら、穴党からすれば『良い負け方』をしたと考えて良さそうだ。
余談としては、持ち前の気性の強さから先々には距離短縮も視野に入ってくる可能性がある点。その時が来た時には好意的に捉えるべきとの一歩先の見立ても書き記しておきたい。
(執筆:久光匡治)
久光匡治
従来、専門家がその道一本で務めあげる取材と調教。その双方を股にかけ、場所を選ばず活躍する二天一流ホースマンとは彼のこと。馬・人の両側面からあらゆる可能性を探り、時には上位人気馬を印から切り捨てることも辞さない予想スタイルはまさに天衣無縫。優馬の産んだサムライが、今日も未踏の道を征く。


