終わってしまえばなるほど、の典型みたいな話だが、先日函館スプリントSを勝ったガルボの父はマンハッタンカフェで母父はジェネラスだった。いずれも洋芝を大の得意とする血統で、言ってみればガルボは洋芝の申し子だった。
マンハッタンカフェの洋芝の戦績(札幌・函館を合計。期間限定なし)は、勝率11.2%、連対率19.6%、3着内率28%で、特に長距離の洋芝の安定味は抜群だ。中長距離洋芝での適性はサンデー系の中ではステイゴールドと並んでトップ。ただし短距離洋芝の成績がさほど目立たないのがデータ派にとっては盲点だったかもしれない。
母父のジェネラスの洋芝の産駒成績(札幌・函館を合計。期間限定なし)は、勝率8.9%、連対率15.4%、3着内率22.8%だが、これを函館芝の1800~2600mに限定すると、勝率17.9%、連対率23.1%、3着内率28.2%という、あっと驚く成績になる。それよりも何よりも代表産駒に函館記念を3回勝ったエリモハリアーがいる。
新種牡馬は、デビューから数年の産駒成績で産駒の距離・コース適性にある程度目星がつくと、それ以降の産駒はもっぱら最初の産駒たちの成功をなぞるようにして使われていくことが多い。それは試行錯誤の無駄をなくし、より効率的に稼がせることを目的としたごく普通の采配である。
だが、最後まで繁殖牝馬の質が落ちるどころか、むしろ尻上がりに上がっていったサンデーサイレンスみたいな例は本当に稀で、繁殖牝馬の質は種牡馬デビュー後の数年がもっとも高い。言い換えると普通の種牡馬の産駒は後ろに行くほど質が落ちていく。しかも晩年の産駒が先達の業績の後を追って走るため、後ろに行くにつれてデータ的なエッジが消えてしまいがちになる。とくにマイナーな種牡馬はそうなりがちである。したがって過去の種牡馬の血統的な特徴を知りたいときには、全産駒の統計を見るより、代表産駒の経歴から判断するほうが正しいことが多い。
強いのか弱いのか、7歳の今に至るまでイマイチ正体がつかめなかったガルボだが、今回あらためて血統を見て「少しあなたのことがわかりました」という感じ。だったら次の狙いはキーンランドCかというと、ジェネラスの産駒が同じ洋芝でも札幌はダメで函館のほうが断然よかったことを考えると、可能性は低いが、むしろ距離延長して函館記念に出てきたら狙えるのではないか。
さて、『馬場トレンドジャッジ』の内容のフォローアップを中心に、『競馬JAPAN』開始以来続けてきたこの連載ですが、今回が最後の回になりました。ほぼ1年に渡ってお付き合いいただきましてありがとうございました。御礼申し上げます。今後は『馬場トレンドジャッジ』を通じて皆様方の馬券的中のお役に立てますよう努力してまいる所存です。
今後ともよろしくお願い申しあげます。
「コースの鬼!コースの読み方&全GⅠ解析編」
の増補改訂版発売のお知らせ

▲増補改訂版 コースの鬼! コースの読み方&全G1レース解析編 (競馬王新書EX004)
(株)ガイドワークスから「コースの鬼!コースの読み方&全GⅠ解析編」の増補改訂版を、11月22日に発売いたしましたので、この場をお借りしてお知らせします。
同書籍は2007年に初版を出したのですが、それから6年の間に馬場作りが大きく変わりました。そこで今回の改訂版出版に当たり、最新の馬場を理解する上で必要なところ、不足なところを書き足し、大幅に改稿することにしました。
6年前と現在の馬場の違いは、当時はまだ試験的に使われ始めた段階だったエクイターフが本格的に導入され、芝のレベルがエクイターフ品質に変わったこと。またシャタリングマシンが導入されて芝の路盤が軟らかくなったこと、ダートの粒度分布が研究されて、砂厚の割に速い組成に調節されるようになったこと…などです。
それらには、このコーナーで何回か触れた事項もあるし、ダートの粒度分布の解説など単行本で初出のものもあります。そうしたアップトゥデートな事項については可能な限り取材し直して書き足しただけでなく、6年たって多少は進歩した(と思われる)現在の自分のレベルに照らし合わせて全事項を吟味し直し、書き直しました。
自画自賛ですが、初版を読んだ方にも再読可能な内容になったと思いますし、わかりやすい馬場の入門書に仕上がったとも思っています。本コラムを通じて馬場に関心をお持ちになった方は、この機会にぜひ単行本も読んでみてください。