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競馬コラム

心地好い居酒屋

2024年09月11日(水)更新

心地好い居酒屋:第148話

これまでもどちらからともなく連絡を取り合い、予定では秋競馬開幕翌週、つまり9月9日の月曜日に「頑鉄」に顔を見せるはずたったのだが……。


「悪い。やっぱ今日はきついわ。横山君も帰ってきたことだし、おまさちゃんを筆頭に井尻や刈田あたりにも会いたいのはやまやまだけど」


遠野の方から断りの電話を入れた。


「そっかぁ。この夏は暑さもそうだし酷い天候だったもんな。分かった!皆んなにはうまく言っとくよ」


「ありがとね」


親爺に任せておけば若い連中に余計な心配をかけないよう言い含めるだろう。梶谷(おまさちゃん)は親爺の取り繕いを見透かすだろうから、彼女には自分からラインを入れる積もりだ。


「気候もそうだけど世の中もひでぇ事になってるなぁ。とのさんが以前から『アホに権力を与えたらいかん』『日本を悪くするのは“一に政治家、二にメディア、三、四がなくて五に役人”』と言ってたが、あの兵庫県知事の斉藤ってのは役人上がりだろ。“悪”を二つ持ってるんだからあの鉄面皮ぶりも仕方ないか。三月には優勝パレードの責任者らしき職員が自殺しているらしいし、七月には県民局長が。このままじゃ諫死どころか無駄死。そういやぁ森友問題じゃ国税局の職員が自殺。改竄を命じた佐川ってのは裁判にも出廷せず今ものうのうと生きててお咎めなし。弱者は泣き寝入りしかないんだろうな」


「親爺の言うとおりだが、メディアもメディアよ。斉藤の人非人ぶりは驚嘆に値するとして“水の落ちた犬は打て”とばかりに悪辣非道ぶりを同調報道。これはこれで如何なものか。そこまで正義ぶって追求報道するのなら親爺が言った佐川や裏金大物議員も俎上に揚げて欲しいよ」


遠野も嘆きつつ、おやつをパクリ。


「何か食ってんの?」


「かりんとうだよかりんとう」


「へぇ。初めて聞いたよ」


「えっ。前にも言わなかった?<沖縄県産黒砂糖使用 蜜二度掛け黒糖かりんとう>というセブンイレブンのPB商品だけど、これが結構美味くて。あっそうそう。後は粗目(ざらめ)煎餅にも嵌まってるんだ」と言って水を飲む。


「おやつに甘いもん食って夜は日本酒か。運動不足だし気をつけんと糖尿になるぞ」


「ご忠告は有り難いが今さらって気もするし……」


「何言ってんだ。まだまだだよ。おまさちゃんや京子ちゃんと酒を飲まんといかんし来年の大谷二刀流も見たいだろ。それに直近では総裁選に立憲の代表選もある。結果とその後も見届けないと」


親爺の声に張りが出てきた。さては


「一杯入ったのか?」


「アハッ。吉野が気を遣ってな。ホンのチョッピリだけど横ちゃんの爺さんが、またまた『男山』を送ってきて」


「例の大吟醸か。いいなぁ。でも俺は昼酒はやらん。親爺こそ昼から飲んでると血圧が上がるぞ」


「アハッ。今日は特別。夜明け前から大谷を観ててな。電話が終わったら昼寝する積もり。まぁ寝酒みたいなもんだ」


「じゃあボツボツ切るか」


「いやいや。とのさんが良ければもうちょっと」


「俺は喉の運動になるから構わないけど」


遠野にすれば20~30分は喋ったほうが肺にも有効で途中からスマホを薬箱に立てかけスピーカーに設定した。楽ではある。


「それにしても岸田ってのは最後まで小汚ねぇ奴だな。現職が負けたんじゃみっともないってことで総裁選を断念したくせに『責任を取る』とかほざいて。それもテレビでは大本営発表の『巨大地震注意』を常時タレ流している最中に。こんな輩が国の舵取りをしてるなんて。とのさんとしか話せねぇけど腸が煮えくり返るほど腹が立って腹が立って」


講師役の横山の不在期間が長く美女二人と会う機会も減り親爺もかなりストレスが溜まってるようで。


「そこで<雨後の筍>になったわけだ。安倍の子分を自認する高市も出そうだし7、8人は堅いな。たかだか200万人程度の党員党友なのに大げさな街頭演説を繰り返し、それをテレビが大騒ぎで放映。企業団体献金を禁止しなくっちゃ金権政治は終わらん。金集めパーティーだって禁止が当たり前だが、やるならせめて税金を徴収しなくては。候補者全員が入りの部分には触れず改革改革と叫んでもなぁ。衆院選のいい事前運動だろ。所詮その程度よ」


「でもよ~。へなちょこ立憲じゃ話にならんし結局はこの中から総理が出るんだし不毛の選択ながら誰がいいのかねぇ」


「結果は分からんが、あの“THE MATCH”のポスターに似たようなのを見た気がしていたが林(芳正)が立候補表明時に『仁』と書いた色紙を掲げただろ。あれでピンときたね。東映のヤクザ映画のチラシみたいで。ヤクザ映画と言えば『仁義なき戦い』。今回の総裁選も“マイナ保険証”を巡って閣内不一致が露呈されたし、まさに“仁”義なきだ。“シャッポと神輿は軽いに限る”が、松方弘樹扮する哲ちゃんこと坂井哲也が山守組組長(金子信雄)に向け啖呵を切ったんだが、いいか親爺、良く聞けよ。『あんたは わしらが最初から担いだ神輿じゃないか 神輿が勝手に歩けるんなら歩いてみいや おう!』。これだよこれ。総理だって軽い方が扱い易いんじゃないの」


遠野が松方弘樹の口調のまま声を張り上げたもんだから親爺も電話の向こうで吃驚したようだ。一瞬静寂があったが


「面白い。もう一回喋って。俺も覚えるから」


「いやいや啖呵切ったら疲れた。後でショートメールするよ」


「そうだな。よろしく。今週は三日間競馬で週末も疲れるしなぁ。とのさんは体に気をつけてよホント」


「昔は9月下旬まで札幌競馬があって、それなりに風情があったのに、それも縮小されてその分が中央場所に振り替えたわけだろ。それもこれも売り上げ増加のためだし、これじゃあローカルは寂れるばかり。今からまたまた“ノーザン祭り”が始まりそう。弱肉強食もここに極まれりか」


「横ちゃん曰く『ノーザン→シルク・キャロット・サンデーR→木村厩舎→ルメールは鉄板』らしい。このデンで言えば『セントライト記念』はアーバンシックだが、全部揃っているのは『ローズS』レガレイラ。こっちの方が信頼は高そうだ。参考までに」


「はいはい。シャッポも神輿も鞍上も乗るのはルメールってことですか」 


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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