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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年10月26日(水)更新

心地好い居酒屋:第124話

寒風吹き荒ぶ――。とはこのことだ。「菊花賞」明けの翌月曜日。遠野は下着を重ね着、冬服を取り出してのお出掛けとなった。それもこれも「得月」のため。9月に梶谷と飲んだ後「来月中には是非もう一度」の約束をしていたからだ。9月限定出荷の大吟醸をいつまでも寝かせておく訳にもいかず、先週のうちに10月24日決行が決まった。


遠野がクリニック経由で「頑鉄」に着いたのは5時半。タクシーを降りると冷たい風が吹き抜けた。店に客はまだ誰も居ない。「寒っむいなぁ」「お疲れお疲れ。でも明日はもっと寒く、雨まで降るとか言ってたぞ」と親爺。「とりあえず焙じ茶を頂戴。たまには爺い二人の清茶淡話も悪くねぇだろ。第一、おまさちゃんが来るのは7時前後。早めに仕上がると、先月みたいに『遠野さんも一緒に飲んでくんないとつまんない』と拗ねられても困るし……」と応じながら指定席に向かった。


親爺が板場に向け焙じ茶と茶請けを注文。斜向かいに座った。「違えねぇ。3本残ってるし長い夜になりそうだな。これで京子ちゃんが居れば最高なんだけど」「こういうご時世だと、いかに普通の生活が貴重か、ってことだな」。なんだか本当に“清茶……”の雰囲気になってきた。一瞬の静寂を破ったのは仲居の木村さん。明るい声で「いらっしゃいませ。お久し振りです。寒かったでしょう」。微笑みながら暖かいお絞り、焙じ茶に茶請けを置いた。沢庵と胡瓜の塩漬けにキスの骨煎餅みたいだ。


「大きな声じゃ言えんけど、き~ちゃん(木村さん)もしつこく統一教会関連から勧誘を受けてたみたいでな。子供が巣立ち一人暮らしの女性ってことで狙われたんじゃねぇの。でも、この騒ぎでピタッと止ったみたいで…」「なるほど。それでか…。ハキハキした元気な声だったもんな」。納得しながら焙じ茶を啜った。


「ところで昨日(菊花賞)はどうした」「ダメ。社台系の馬を買って応援するのも癪だし、遊びで、デキのいい丹内のマイネルトルファンの単複だけを買って見てたよ。まぁ観戦料だな。あ、この件は横山君には言うなよ。彼のことだから<自分のせいで>と落ち込む可能性大。それこそ他言無用の木村さんと一緒」と言って口にチャックした。


「了解。実は俺達も丹内から買ってたんだけど、“とのさんも”となれば責任を感じるかもな。ま、それにしても今の国会は酷ぇな。責任というのを知らんのかね。髪の生え際か山際がどうかは知らんが、あんな奴が日本の経済の司令塔でコロナ担当なんて冗談にもホドがある。あんなチンピラのために時間を割いてる時間があるのかよ。どれもこれもズブズブじゃねぇか。安倍は統一教会の理解者で広告塔、おまけに守護神。とのさんが言ってた通り“国葬”じゃなく“自民党と統一教会の合同葬”にしときゃあ良かったんだ」。親爺、己のハゲ頭を撫でながら憤慨する。


「煮え切らない岸田=自民党を攻め落とせない野党はもっと酷いぞ。“国葬”前に二階が『今は反対でも終わればやって良かったとなる』なんてほざいていたが、じゃあ岸田はどうなんだ。『総理は今も国葬は間違いない判断だったんですか?』と質問する議員が居ないってのも本気で首を取る気が無い証拠だろ。だいたい質問主意書を提出して質疑応答なんてフザけた話よ。善人か悪人だったかどうかはともかく趣意書なし。“国会の爆弾男”と呼ばれた楢崎弥之助みたいな人間が複数出てきたら面白いんだけどなぁ。もっとも、今の若い奴は楢崎だったらサッカー選手しか思いつかんだろうが」


「岸田を筆頭に“総合的に”“率直に”“真摯に”とか口先だけ。中身がなけりゃ実行力もねぇ」「いやいや。言葉遊びならまだまだあるぞ。“謙虚”“丁寧”“厳正”“しっかり”“誠実”…。言い出したらキリがない。これらをぜ~んぶ“適当に”に置き換えたら、まさに“正直”な発言と受け止められるな」


これが“清茶淡話”とは…。単なる怒りと不満に愚痴なのだが、爺いにとってはストレス解消、憂さ晴らしやも知れぬ。


「言葉遊びといえば…」。親爺が喋りかけた時、ドアが開き横山が入ってきた。「遅くなりました。寒い中お疲れさまです」と、まずは遠野に一礼。続けて「寒さには慣れてますがこんなに寒暖差が激しいと、やはりこたえますね。“三寒四温”とはいえこの秋は極端過ぎます」


遠野は「久し振り」と応えて、とりあえず骨煎餅を口に入れた。慌てたのは親爺で「おいおい横ちゃん!らしくないよ。“三寒四温”てのは冬から春にかけての言葉で、いくら寒暖差があっても、今の時期は使わないの。どうしても変わった挨拶をしたいなら“小春日和”とか“霜降りの季節で”だな」。やんわり窘め教示した。「えっ!そうなんですか。有り難うございます。遠野さんの前でお恥ずかしい限りです」。再び頭を下げた。「なぁ~んも。いかった、いかった(良かった)。親爺みたいな生き字引は大事にしてね」と遠野。


間違いを正してくれる。素直に感謝し聞き入れる。本当に素晴らしい関係になったもんだ。


「横山君も来たことだしボツボツ始めるか」。遠野の言葉を待ってたかのように板場で音がして、木村さんも手際よく立ち回っている。遠野は「菊花賞」には触れず「今週は『天皇賞』。横山君は?」「重量有利の3歳馬イクイノックスとダノンベルーガ。古馬ではシャフリヤールとジャックドールですが、良馬場条件に8番枠以内にパンサラッサが入ったら、ここから買おうかなと。後はドバイ帰りの太めを叩いたユーバーレーベンを穴でチョッピリ」。競馬のことになると立て板に水。何も見ないでサラッと言えるのだから立派。


「<好きこそものの上手なれ>。な、横ちゃん」。今度は褒めている。続けて「おまさちゃんは魚をほぐすのが上手だから今日はノドグロの塩焼き」と。噂をすればなんとやらで当のの梶谷が到着。


挨拶もそこそこに、遠野の隣に腰を下ろすと「ねぇねぇ。あの男辞めるみたい。やっとという感じですけど、あれだけ往生際の悪い人間も少ないですよね。嘘つきはアベゾーからずっと続いているでしょ。最近の子供達は親から『嘘つきは泥棒の始まり』と諭されると『違うよ。嘘つきは政治家の始まり』だよと言い返すんですって」。一席うって「お酒ちょうだい」


外の寒さ以上に首筋が冷たく寒くて震えている輩がいるかも。いや、そんな柔な神経では政治屋は務まらないんだろうな。いやはや。


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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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