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競馬コラム

心地好い居酒屋

2022年06月08日(水)更新

心地好い居酒屋:第119話

夕刊紙のレース担当の編集者はだいたいが火曜日が休日。横山もその例に漏れず7日の火曜日は休み。遠野は前日の月曜日が雨だったせいもありクリニックの予約はなし。で、電話してきたのが親爺だ。


「とのさんさえ良かったら明日(7日)にでも顔出してくんない?横ちゃんの実家からまた『男山の大吟醸』がうちに届いてな。横ちゃんも、とのさんに会いたくてしょうがないみたいで、いつも『遠野さんお元気ですかねぇ。今度はいついらっしゃるんですか』と。ま、俺に誘ってくれと言わんばかりでな。それに『ダービー馬』ドウデュースの二つのキョウマツ(“京マツ”と“強松”)にも興味がありそうで…」


「この間はパンちゃんからの『九郎左衛門』で今度は『男山』かぁ。タダ酒に釣られる意地汚い酒飲みってか」


「と、とんでもない。滅相もない」。慌てて手を振ってる姿が目に見えるようだ。


「冗談だよ冗談。そんな訳ないだろ」「あ~ビックリした」「ごめんごめん」。善人の親爺で人情の機微も理解できるからこそ、冗談も超真面目に受け取る時もある。だから話は対面じゃないと誤解も生まれる。


「で、どうする?」。今度は正常な声だ。


「折角だし、望まれるウチが華。喜んでお邪魔するよ」「有り難う。じゃあ、お雅ちゃんにも伝えておくね。まだ『ダービー』の配当金を渡してないし」「それは楽しみだな。横山君はいつでもいいだろうし、じゃあ3時には行くわ」


その3時前には着いたのだが、すでに横山は待っていて玄関を開けるなり、指定席から立ち上がり一礼、席に着く前に「有り難うございます。我が儘言って申し訳ありません」。再度、頭を下げ遠野の席に誘った。「なぁ~んも。こっちは城山三郎だから」「?」「とのさん曰く“毎日が日曜日”だから気にしなさんってこと」。親爺が笑顔で解説し酒と摘まみを取りに行った。


「ドウデュースお見事でした。感服しました」と、まずは褒め讃え「あのぉ~。キョウマツの事ですが、自分なりに一つは“京都マツダ”だと思ったんですが…。もう一つが…」。早速訊いてきた。「難しくも何ともないよ、それは」と遠野は応える途中で親爺到着。お通しの水茄子と枝豆を並べ一升瓶を抱えて「まずは一杯」と二人に注ぎ、続けて自分にも。遠野はコップで受け親爺と横山に「頂きます」と。横山が再び「有り難うございます」と頭を下げ乾杯となった。


「キョウマツの件は」と親爺。「お察しの通り一つは京都マツダ、でもう一つは“強い松島”。単純だろ」。遠野が言うと二人して飲んでいた手が止り<な~んだ>てな顔になった。


「ただな、京都マツダってのが只者じゃなくてな。話せば長くなるが、車のディーラーってのは、その多くがメーカーの肝いりで、しかも出資もしている。ところが1950年代に親父が自己資金だけで創業。古都だけあって地元の資産家は信用されるし、おかげで商売も順調でメーカーに口出しはさせなかった。京マツはメーカーに相当貢献したはず。と同時に俺の推測ではメーカーから“報奨金”という名のボーナスがかなり出ていたと思うぞ。モノ言うディーラーで“強い松島”として畏敬されてたんじゃないか」。一気に喋り酒を飲み干した。 「そっかぁ。だから今の社長がベンツを筆頭に他の外車の代理店を希望しても文句が言えなかったんですね。そして事業を広げて行った、と」。どうやら横山も“キョウマツ”について勉強したみたいだ。「当時はバブル末期だけど高級車志向の強いユーザーが多かったし、正昭氏は“機を見るに敏”、勝負勘も強いんじゃないか」「だから、とのさんはドウデュースだったのか。ふ~ん」。親爺、納得気だ。


「数字やら調教、血統なんてからの能書きは現役の奴には叶わんよ。あ、そうそう。余談だけどトヨタも60年代から地元の名士や資産家にディーラーになって貰っていたが、ニッサンはほとんど本社主導、売る車種までメーカーが指定していたぐらいでね。社内は組合が強く販売は殿様商売…。そこで結局はカルロス・ゴーンの登場となるわけで」と昔を振り返った。この二人に興味があるかどうか。


「そう言えば遠野さんは『ルマン24』も観戦に行かれたとか。自動車業界に詳しい理由が分かりました」「政界や飲食、ギャンブル…。詳しいぞ。横ちゃんも見習わんと」。二人が褒めそやしても、遠野は黙って聞き流し水茄子を食べる。「いい歯切れと塩加減だ。吉野君が居れば『頑鉄』も生き残れそうだな。『ザッツ築地』は横山君を含む井尻一派がどう動き、働いていくか。その覚悟をしておかんと」。フッと笑った。励ましだ。


「そうだ!ぼつぼつお雅ちゃんも来るし『ダービー』の配当金を渡しておかんと」と親爺が言いカウンターから封筒を持ってきた。


遠野が伝えた自分の買い目は⑬の単と⑬⑱2頭軸の3連複6点。⑱は「オークス」でルメール=スターズオンアースが勝ったことがチョイスの原因。ちゃんと3番も入っていた。親爺によれば単勝が1000円→4200円、3連複は500円ずつで3000円→2万2850円。締めて2万7050円也。遠野が預かって懐に入れた。


「ところでコロナはどうなるかね」。親爺が不安気に訊く。「感染者は徐々に減って昨日は1万人割れ。少しは落ち着くんじゃないですか」「そうあって欲しいが新聞記者と警察はまず疑うのが仕事。国の緩和策はテメェ達の都合もあるからな。集会自粛で金集めパーティーが出来なかったし。歳費100万は少ないなんてほざいた衆議院議長の細田は、もう開いたんだろ。フザケタ連中よ。菅の言った“自助・共助・公助”が身に染みる」。遠野が溜め息をついた時、天女が現れた。


挨拶もそこそこに遠野の前に座ると「遠野さん有り難う。阿部さんと大騒ぎしちゃった」「へぇ~。京子ちゃんも買ってくれたんだ。それは嬉しいね」。「でね、『本当にコロナが落ち着いたらご一緒しましょう』と。あ、親方もどうぞ」「俺も!」。破顔一笑の親爺、人差し指を自分の顔に向ける。「それもいいけど、『親爺と横山君は③が来なかったら良かったのに』と悔しがってだよ」「えっ。そんなぁ。じゃあ止めにします?」「そんな事言ってねぇよ」「勘弁して下さいよ」は横山。これには全員、口に手を当てての大笑いだ。


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源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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