今年から、宝塚記念が春の連続GⅠシリーズの掉尾を飾ることに。そして、これまでより2週早まったことで、一番アオりを受けるのが天皇賞・春組。間隔が詰まる分、長丁場を使ってからの立て直しが容易でなくなるのは想像に難くないからだ。
逆に、大阪杯経由のグループにとっては格好のローテーションになってピークを保てる利点が。ということなら、ベラジオオペラに敬意を払わないわけにはいかぬ。
4歳秋は夏負けが尾を引いてトップコンディションに及ばなかった。それとは対照的に、早目の栗東入りから順当にピッチを上げられた前走で大阪杯連覇の偉業を達成して、それが1.56.2秒という驚異的な時計だったから脱帽するしかない。
阪神内回りに絞れば3戦3勝。今回もマックスになる条件なのは論を俟たず、道悪を意識して早目にエンジンを吹かして最後に苦しくなった昨年のこのレースは大目に見るべき。
また、ほぼ同じ時計だった追い切り以上に強調できるのは、前回時より1本多い3頭併せ。叩いての上積みさえ見込んで良いのなら、3度目のGⅠゲットに向けて順風満帆。
レコードで決着した大阪杯で2着に食い込んだロードデルレイもそれに付随して浮上する。
それが初のGⅠだったことで、経験値アップの今回は更なる前進が見込める。実際、織り込み済みだった直前の終い重点はともかく、ビッシリ追った1週前にはCWの自己ベストをまたまた更新と完全に実が入った模様。
当距離にしても、抜群の手応えから後続に水を開けた2走前の好時計が示す通り、適性面でも文句なし。ただし、昨6月の鳴尾記念取消から完全に立ち直ったとしても、高速ターフでのエンジン全開が明らかになった今、週末の天気が心配。雨の影響を大いに受ける馬場になると、一転して評価微妙といった立ち位置に。
逆に、その状況になって急浮上するのがメイショウタバル。
対ロードデルレイといった点なら、日経新春杯で大きく置かれた事実が。けれども、当時は全くコントロールが利かなくなった逃げで自滅としか言いようがなかった。対して、前走のドバイでは強敵相手に上手くセーブしつつで粘り腰を見せた。無論、デリケートな面が未だ消えたわけではないゆえ安定味には欠くが、離す一方だった3歳春の毎日杯が強烈な印象を残す。荒れ馬場なら易々とは交わさせぬということ。
道悪に実績があるヨーホーレイクも。
4歳冬の日経新春杯勝ちから2年以上、屈腱炎でのブランクがあって、未だに騙し騙しの調整が宿命づけられている。それでも、タイトな流れで出遅れがむしろ功を奏した印象もある前走にしても、上がり最速が嘘ではない際立つゴール前の伸びだったし、より適性のある2200mなら逆転もあり得ると思わせた。
しかも、毎日王冠以来となった2走前が+20キロと緩いままだった上に、それを叩いた大阪杯でさえまだ途上。それに対し、大きく離れた最後尾からと劇的なまでの負荷アップがあった1週前が好時計に裏打ちされた内容。急上昇を確信できるわけ。
とはいえ、西下する関東勢も負けてはいない。まず、3歳牝馬としての有馬制覇で歴史を塗り替えたレガレイラ。
それ以来となる今回。骨折を挟んだことでもビハインドが大きいとするのが常識的。しかし、全体像からすれば少々細身といった印象だったのが3歳時だったとすれば、ユッタリと構えた胴になってバランス良く筋肉量がアップしたのが目下。
現に、目論見通りに反応した追い切りの併せ馬。完歩が大きく実にダイナミックになったのを進化と受け止めるのが妥当。勿論、有馬記念でひと脚使えたのは、極端なスローで進む中、道中での消耗を最少限に抑えられたことにも拠るから、3角からの攻防が激しくなりがちな当舞台ではエリザベス女王杯の二の舞があって不思議ない。それでも、こちらの予想を上回る成長ぶりに賭けたくなる。
菊花賞が完璧な立ち回りだったのとは逆に、折り合い重視の余り、流れが向かずに窮屈な道中を強いられたアーバンシックの有馬記念は、不完全燃焼と捉えて良い。
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柴田卓哉
SHIBATA TAKUYA
学生時代は船橋競馬場で誘導馬に騎乗。競馬専門紙『1馬』在籍時には、 「馬に乗れる&話せるトラックマン」として名を馳せる。 30年以上にも渡りトレセンに通い詰め、 現在も美浦スタンドでストップ・ウオッチを押し続ける。 馬の好不調を見抜く眼に、清水成駿も厚い信頼を寄せる調教の鬼。 また東西問わずトラックマン仲間たちとの交友関係も広く、トレセン内外の裏情報にも強い事情通。