先週のエリザベス女王杯は、ルメール騎手が騎乗したブレイディヴェーグが制しました。
ルメール騎手は絶叫調で、3レース連続でのGⅠ制覇となったわけですが、ここではエリザベス女王杯でアートハウスに騎乗し逃げ手にでた坂井騎手に注目してみたいと思います。
ルメール騎手と坂井騎手が同じレースに騎乗し、かつ坂井騎手が逃げたケースが23年は11月12日までで18例あります。成績はルメール騎手が9勝、坂井騎手1勝、ルメール騎手と圧倒しています。
この対戦成績について詳しく解説してみます。
関東圏で逃げ馬がおらずスロー必至のレースでは、ルメール騎手は自分からハナを奪うケースが多々あります。しかし本来、逃げた経験がなく逃げが得意でもない馬を逃がすのは、やむを得ない次善策なのでできれば逃げずに済むにこしたことはありません。
坂井瑠星騎手のような積極的に逃げる騎手が居てくれれば自分が逃げる必要はなくなります。そういうシチュエーションが、ルメール騎手への追い風になっていると考えられるのです。
とはいえ、逃げは最強の戦法でもあるので、仮にルメール騎手にマークされたとしてももっと勝てそうなもの。坂井騎手の今年の逃げ勝率は26.0%もあります。
ルメール騎手がいるレースで逃げるとかなり逃げ切り率が下がるのはなぜでしょうか。
一方で、ルメール騎手は約半数近くのレースで勝っています。ペースメイクしてくれる坂井騎手という存在がいるのでレースしやすいから。これは当たらずとも遠からずなのでは。
事例をひとつひとつ見ていくと、宝塚記念のイクイノックス(坂井騎手はユニコーンライオン)など、ルメール騎手が勝って当然というケースも少なくありません。
馬の人気を考えてもルメール騎手の騎乗馬の質のほうが圧倒的に上なのですが、対戦成績にこれだけ差がつくのは、それだけでもなさそう。他の騎手にペースメーカーとしてうまく利用されるのは、積極性をウリにしている騎手の宿命ともいえるかもしれません。
ルメール騎手だけでなく、逃げ確実の坂井騎手を利用しようと考える騎手はどんどん増えてくるはず。勝ちパターンが逃げだけではますます厳しくなります。24年はある意味正念場かもしれません
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。