先週の皐月賞は、モレイラ騎手が騎乗したミュージアムマイルが勝利しました。先々週の桜花賞に続いてのGⅠ制覇で、この春はGⅠ3勝目と無双状態が続いています。
さて、そんな皐月賞ですが、ここではマクりを決めレースの大きく動かした杉原騎手とファウストラーゼンのコンビに注目したいと思います。
ファウストラーゼンは、ホープフルステークス、弥生賞に続き3戦連続でマクる競馬を試み、今回は直線粘りを発揮できずに直線で15着に沈んでいます。
1000m通過のタイムは59.3秒と馬場を考えると前半は緩いペース。残り1200m付近から動き出して、残り1000mで先頭に並びかけるところまでは完璧なレース運びに見えました。というのは、そこまで脚を消耗することなく前のポジションをゲットできたからです。ただ、これまでとは違ったのはここからでした。
前走の弥生賞では、マクって先頭に立ったとき、ルメール騎手のヴィンセンシオが抵抗せず先手を譲ってくれたので、先頭に立ってから一呼吸置くことができました。それが直線での粘りに繋がったといってもいいのではないでしょうか。
しかし、今回逃げていたピコチャンブラックは揉まれると良くない馬の性質を考えてハナに行った馬なので、ファウストラーゼンに先手を譲ると、自分はそこで試合終了になってしまいます。そうはなりたくないので、ハナは譲らず抵抗するしかありませんでした。というわけで、1000m通過時点で先頭のピコチャンブラックに並ぶことはできたものの、そこから内のピコチャンブラックに抵抗され、さらなるペースアップを余儀なくされてしまいました。
さすがに、残り1200mから動き出して、ゴールまでトップスピードで走り切るのは不可能。一般的に馬がトップスピードで走れる距離は400mといわれているので、無謀な競馬になってしまったと言えるのではないでしょうか。あるいは、一旦ピコチャンブラックの番手に収まるという選択肢もあったように思います。
ただ、こういう強気な競馬をしたことで、前で競馬をした馬にとって負荷の大きいレースになったことは間違いありません。
ダービーの馬券予想を難しくし、ダービーをより面白いものにしたという点では、いい仕事をしたのかもしれませんね。
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樋野竜司
HINO RYUJI
1973年生まれ。「競馬最強の法則」02年11月号巻頭特集「TVパドック馬券術」でデビュー。
斬新な馬券術を次々に発表している人気競馬ライター。いち早く騎手の「政治力」に着目し、馬券術にまで洗練させた話題作「政治騎手(㏍ベストセラーズ刊)」で競馬サークルに衝撃を与えている。