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競馬コラム

心地好い居酒屋

2017年02月21日(火)更新

心地好い居酒屋:第16話

雨水(18日)から啓蟄(3月5日)に向かう直前の17日金曜日は〝春一番〟が吹き荒れ、東京近辺は20度前後の暖かさ。

本格的な春に向かうはずだったのだが…。翌18日からは一変、またしても冬に逆戻り。今年は、これまでも大雪が降ったり〝三寒四温〟なんて生易しい気候ではないようだ。

親爺や井尻と約束した月曜日20日も病み上がりの遠野にすればチョッピリ応える天候となった。傘をどうするか、下着を何枚着込むか悩んでいるうちに、ついつい出遅れてしまった。

連中には「よんどころない用事で20分ほど遅れる。先にやっといてくれ」と伝え、築地に着いたのは7時前。

〝今日も鍋にするか〟と思いつつ「頑鉄」の引き戸を開けるとホワッとした暖かい空気が押し寄せてきた。

店は一杯で、入ってすぐの2席の客が鍋を囲んでいるのだ。見ると一番左の席には俳句3人衆が居て、そのリーダー格パンちゃんこと木村さんが手を挙げ「お久しぶり。遠野さんも鮟鱇いかがですか?」と声をかけてくれた。

「これはこれは!先日はご馳走さまでした。また改めて」。丁重に断り奥の席へ向かった。

この日の席順は通路側の奥に横山、隣が梶谷、刈田。壁際の奥が空いてて手前が井尻。

先月、刈田に「悪趣味だなあ。人を試して。別部さんみたい」と別部批判と同時に刈田を窘めた真面目そうな下川は欠席みたいだ。

「すまん。遅れちゃって」。遠野は右手で手刀を切り、井尻の後を回りいつもの席に座った。

全員が〝大丈夫ですか?〟てな感じで遠野を見遣り「お先やってます」「どうぞどうぞ。遅れた俺が悪いんだから…」。

遠野は詫びた後、「親爺!熱燗を頂戴」と注文を入れ、テーブルに目を落とすと、料理はなく横山が瓶ビール、梶谷が熱燗を飲み、刈田と井尻の前には壺の吉四六と氷が。そして何か書かれたメモ用紙とボールペンが置かれている。

「何をしてた?仕事の続きか」。「いえいえ。横山が会社でこれを(集る、と書いている紙を指さし)゛あつまる〟(正解=たかる)なんて読んだことがきっかけで、〝じゃあこれは〟と何文字か読み辛い漢字を書いて遊んでいたんです」。刈田が申し訳なさそうに言う。

編集者としては勉強になるが、下川がいたら「酒の席でやめましょう」と言ったかも。

ちなみに30文字程度の設問で、読めなかったのは、準(なぞら)える。肖(あやか)る、詳(つまび)らかの3文字だったそうな。これなら立派なもんだ。

遠野が苦笑いした時に、全員のお通し=若布の茎の佃煮と湯通ししためかぶ=と熱燗が届いた。

若布で思いついた。〝少し横山に花を持たせてやろうか〟と。茎のコリコリ感を味わいながら、メモ用紙とペンを取り「和布刈」と書き、「何と読む?」。

聞かれた刈田は首を捻りながら「わかめがり?ですか」。すると覗き込んでいた横山が「めかり!」。嬉しそうだ。

ついでに「絆」を書くと声を揃えて「きずな」。そこに「す」を加えた。すかさず横山が「ほだす」。

さすがレース係を望んだだけのことはある。競馬に関係ある言葉は詳細に覚えている。

「横山クン凄いじゃん」と褒めた後「ところで料理はどうした?」。

誰にともなく訊ねると、横山が「はい。頼んでます。親爺さんが奨めてくれた刺身の盛り合わせに、むつの塩焼き。後はめばるの煮付を。そうでしたよね課長!」。

井尻は左手で遠野の腿を突きながら、機嫌を良くした横山に頷いた。

そこへ刺身が運ばれてきた。遠野の方に向けられた5、6種盛りの大皿の一番手前には大量の関サバが。梶谷の正面にはノドグロが居る。今、調理中であろう、むつもめばるも旬の高級魚だし「豪勢だなあ今日は」。

思わず声が出たところに親爺が徳利と猪口を持ち「へへっ。お邪魔しますよ」と上がり込んで、井尻の隣に座った。

「いえね。昨日のフェブラリーSは社台の馬が1頭だけ。それも吉田勝己本人の名義で屋根がデムーロとくりゃあ買うしかないやね」。こぼれんばかりの笑顔だ。

GⅠだけは3万円買う親爺、恐らく本線で取ったのだろう。

「だからさ、少しサービスさせてもらったよ」「おいおい。俺がいない時に勝手にそれはないだろ。〝集り〟じゃないんだから」

先刻の漢字遊びを思い出し、冗談まじりに言うと、親爺は真に受けて「とのさんに対して゛集りだ〟なんてとんでもない」と、うろたえて手を振る。

あまりにも恐縮の体だったので、遠野はすぐに「ごめんごめん。実は…」と事情を話すと「人が悪いなあ。びっくりしたよ」。親爺はホッとした様子で立ち上がり板場に向かい、しばらくしてから焼きと煮物を持ってきた。

遠野が熱燗を横山がビールを注文すると、梶谷が取り皿を持ち遠野を見て「どちらを?」「じゃあ両方をほんの少しずつお願い」。気配りのできる子だ。刈田が羨ましそうにしていたのは考え過ぎか…。

最近はやたらと話題になりやすい事件、事故が起こり会話に事欠くこともなく、〝わいわいがやがや〟で時間が過ぎていったが、話が途切れる静寂を見計らっていたのか、横山が突然「失礼ですが遠野さんは、今は何をしておられるんですか?」と。

井尻が慌てて「おい…」と言いかけるのを制して「俺か。そうだなあ。物書きの真似をしたり、取材を手伝ったり…。年金も貰ってるし、なんとか糊口を凌いでいるよ」。

それを聞いた横山は「う~ん」と唸り「孤高を凌いでますか。まるでイチローを超えた求道者みたい。会社で伝説の人との噂は聞いていましたが、やはり」と一人で納得。

周りは一瞬、静まりかえったが、意味が分かって、さらに絶句。苦笑いでこの日はお積りとなった。

※筆者都合により、当コラムの次回更新予定は来月(4月)となります。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

 
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