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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年05月08日(水)更新

心地好い居酒屋:第66話

「清水さんのカラオケのレパートリーは広くてな。もし、健在で、今日歌いに行けば“お祭りマンボ”だな」。互いに元気だった往時を偲ぶかのように呟き、遠野は飲み干したグラスを見詰め弄んだ。


「何ですか、それ?」「横山君たちの年代じゃ、いや井尻も知らんだろうな。ま、後でスマホで調べれば出てくると思うけど〽お祭りすんで日が暮れて 冷たい風の吹く夜は……って歌詞で」。遠野が軽くいなすと、横山は首を捻りながら蛸とセロリ&胡瓜の酢の物を口に入れた後、遠野と親爺に酌をし、目で親爺に助けを求めた。


「平成最後だの、事ある度に令和初などと仰々しく言い、おまけにテレビ、新聞は史上最大の10連休ルポで、これまた大騒ぎ。何も考えず“御代替わり”に万歳、万歳だろ。いったいどうなってんのか?。とのさんはバカ騒ぎの後を心配してるんだよ」


10連休が明けた5月7日の午後、親爺から電話が入った。「とのさんよ~。鰹と小田原のいい鰺が手に入ったし、久々の営業だから景気付けに顔出してくんない?『天皇賞』の結果報告もしていないし…。休み前に横ちゃんも『連休明けの火曜日に行きたいのですが、遠野さんはいらっしゃいますかね』と言ってたんだ」「彼は火曜日は休みだろ」「いやいや『休んでもすることはありません。しばらくお会いしていませんし是非』と。白状すると横ちゃんに頼まれてでもあるんだ」。電話口で理由を考えオタオタしてる様子が目に浮かぶ。


<そう言えば前回会った時も、親爺の『旨い鰺』に釣られたなぁ>と思いつつ「いいよ。どうせこっちは城山三郎(著書・毎日が日曜日)状態だ。お祭り騒ぎで芋洗い状態の連休中は出歩かなかったからな」。二つ返事で引き受け、この日の飲み会となった訳だ。


「それにしても、『天皇賞』は見事だったね。さすが昔とった杵柄。読みが違う。おかげで俺もご相伴に与ったよ。馬連はもちろんだが、横ちゃんはフィエールマン本命だったから、ちゃんと二人の本命2頭を軸にして3連複も取ったしね」。親爺、話したくてウズウズしてたみたい。「おいおい。珍味屋の大谷さんじゃあるまいし、当たり馬券をコピーなんてしてないよな」。遠野がやや厳しめに問うと「とんでもない。あの人は自慢だけで唾も出さないけど、俺は違うよ。この酒も今から出す鰺のなめろうも今日はお代を頂きません」とキッパリ。酒は「完庶処」が推奨する宮城の「浦霞」大吟醸だ。


「はいはい。ご馳走になります」。遠野と横山が苦笑いした。するとタイミングを見計らっていたのか、仲居がすっと寄ってきて2人に向かって「ありがとうございました」。遠野と横山が「ん?」てな感じで目を合わせると「親方が『2人のおかげだ』と言って休業手当を頂戴したんです。いつもいつもお世話になってます」。「ごゆっくり」と頭を下げ持ち場に戻っていった。


「どうなってんだ?」「実はね仲居のきいちゃん(木村喜代子)は日当制だから休日補償を、板場には祝儀を渡したんだ」。やや照れ気味に説明し禿げ頭を叩いた。親爺は偉い! 「ところで『NHKマイル』はどうした?俺はパァーだったけど」。親爺が訊いてきた。「社台の馬ばっかで、断然人気のルメールは買いたくないし、かといって買って外れると余計頭に来るし、バカバカしいから“ケン”したよ」と遠野。


「そのルメールの降着はどう思います?」「当たり前には違いないが、あれが降着なら『皐月賞』も降着だろ。それをしなかったのは、やっぱりルメールを『天皇賞』に乗せるためじゃないの。それより何より気にいらんのは、相も変わらず『あの事象がなければ着順が変わっていた。あるいは着順変更には至らず』なんていう告知だ。昔みたい素直に“進路妨害”の程度次第で失格、降着、戒告…にすればスッキリするはず。少なくとも俺はそう思う。ブエナビスタとローズキングダムの『ジャパンC』が現制度のキッカケとも言われているが、頭、ハナの勝負に脚色とか余力、勢いなんてのを裁決が判断するからおかしくなっちゃうんだ」。相当怒っているが、まだ怒り足りないようで新しい酒で喉を潤すと「ルメールを5万円程度の過怠金(皐月賞)でお茶を濁し、おかげで『天皇賞』を勝ち、マスコミも無批判で『偉業達成』だもんな。調子にも乗るよ」


うんうんと頷いていた親爺だが「人間腹が減ると腹も立つ。今、鰺のなめろうを作っているからちょっと待って」と立ち上がり、板場に入っていき、しばらくして小鰭(こはだ)と赤身の握りを2人に一貫づつ持ってきて「とりあえず食っててよ」。「お、ありがとう。ま、今回の実質6日は厳しい実刑だが、甘やかした方にも責任があるんじゃない」「あ、そういえば、昨日の船橋でルメールが勝ったんですがテレビを見る限り殊勝な態度でしたよ」と横山。


シャリ少なめの寿司を2貫摘まんで落ち着いたのか、今度は酒も一気ではなく味わって飲み「日曜早朝の『ケンタッキーダービー』での降着事件も多少は“JRA”も気にしたのかもな」。遠野が静かに言うと「勝った馬(降着)の強さは抜群でしたからね。“JRA”の脚色基準だとそのまま確定でしょうし…。あれもかなり揉めたみたいですが他の陣営からのオブゼクションが効をを奏したとか。禁煙症候群がお手本で欧米に倣うのが今の日本。競馬界もオブゼクション制度が普通…とはなりませんかねぇ」。横山がスマホを弄りながら後に続いた。


「元号替わりや連休騒ぎはすぐに収束に向かうだろうけど、これからもGⅠのお祭り騒ぎは続きそう。親爺も『天皇賞』大儲けとはいえ、あまり調子に乗らないでよ」「分かってる分かってる。今もGⅠだけ3万円を守ってるから」と言い、届いたばかりのなめろうに親爺自ら一番箸を付けた。「うん。旨い。青ジソと茗荷のバランスもいい。さあ、食ってよ」と2人に勧める。


「あ!これですか!?」。横山が急におおきな声を出し“お祭りマンボ”の歌詞を検索したスマホを遠野側に向けた。


「そう。この最後の歌詞が傑作でな。天国から一気に地獄へ――。とも取れるだろ。もっとも俺達や木村さん(仲居)の立場に当てはめると〽年金減ったオジさんと パート無くしたオバさんの~の方がピッタリで切実だけどな」と解説し、なめろうをパクリ。


「そういやぁ“浅草三社祭り”も間もなくだなぁ」「5月の3週目だから今年は17日~19日か」。清水の地元だけに遠野もよく覚えている。「じゃあ『オークス』どころじゃないな」と親爺。「それがいい。資金は『ダービー』まで取っといて」  


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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