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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年04月21日(日)更新

心地好い居酒屋:第65話

「〽後で気がつく寝小便〽――。とは良く言ったもんだ。ったく俺も呆けたよ」。粘りに粘った桜もさすがに散ってしまったが、時に迷ったような花びらが一枚、二枚と爽やかな風に乗って「頑鉄」のある路地まで飛んでくる。煙草の煙は、一旦ユラユラと上がった後、築地川公園から平成通りに向かって流れて行く。  縁台に座って季節を楽しんでいる二人。親爺が珍しく愚痴った。「横ちゃんがダノンキングリーで、とのさんは『社台には逆らえない』と言ってサーなんちゃらだろ。いつもなら二人の本命2頭軸の3連複は買うのに、(皐月賞は)なぜかダノンからの馬連しか買ってなかったんだよな」。梶谷が不在なのをいいことに終わったレースを話題にしている。


「いいよいいよ。最近は横山君と相談しながら買ってるんだから俺の予想なんか気にすんなよ」「いや。そうじゃなくて。買った積もりでいただけに腹が立つんだ。審議中にハッと思って馬券を確かめたんだが、ないんだよこれが…」。どうにも諦めきれない様子だ。


「泣いても金は戻らんし、俺が当たってお嬢達にもささやかながら配当が出るんだからいいじゃん」。遠野が窘(たしな)め気味に言うと「そりゃそうだ。今年初めての馬券買いでお嬢達の笑顔が見られるんだから楽しみではあるな」。納得したように思えたのだが、新しい煙草に火を点け、一服すると「馬券はともかく、あれだけ長い審議で“着順通り”だろ。で、次の日の新聞で知ったけどルメールは5万円の過怠金だって…。ふざけているよ。“泣く子と地頭”じゃなく“泣く子とお上にゃ勝てねぇ“ってことだな」。


①②着が入れ替わろうと親爺の馬券は全く関係ないのに憤懣やるかたなしの態。「だってよ。去年の『エ女王杯』のモレイラなんてのは審議なしで5万円だよ。もちろん審議なしってのもおかしな話だけどな」「親爺、良く覚えてるなぁ」。さすがの遠野も感嘆の声を上げた。


「横ちゃんが嘆いてたじゃん。ほら!買ってた馬が不利を受けて③着とは0秒1差の⑥着。『どうやっても勝ったリスグラシューには先着できなかっただろうけど、不利がなければ③着には』って」。確かにそういうことはあった。 「裁決じゃあ、ああいう時って、どんな遣り取りをすんのかね。ジョッキーにも脚色とか余力がどうかを訊くんだろ?」「昔はジョッキー自ら抗議することもあったが、今はどうかねぇ。いずれにせよ『皐月賞』の場合、万が一訊かれても②着ヴェロックスの川田がノーザンの馬(サートゥルナーリア)相手に『接触の不利がなければ勝ってたかも』なんて口が裂けても言えんだろ」。遠野が答え、ペットボトルの水を飲んだ。


「そうだよなぁ。競馬会だって無敗で『ダービー』に臨むスターホースが欲しいだろうしな」「それに…。ま、いいか。中に入ろう」と遠野。「何だ、とのさん。言い掛けて止めるなんて。何?」と訊ねながらも、立ち上がり二人して店に入った。  カウンターに座ると「先に飲(や)る?」「いや、焙じ茶がいいな」と遠野。その焙じ茶と一緒に茶請けとして出てきたのはの鰺の骨せんべいだ。「うん。イケる。お嬢達にも出したら喜ぶんじゃない」。遠野は話を逸らしたのだが「それに…の続きを喋ってくれよ」と親爺。


「そうだなぁ。これはあくまで俺の仮説というか深読みだからな。もしルメールが降着なら騎乗停止は免れないし、となると『天皇賞』のフィエールマンにも乗れなくなるだろ。誰にってことじゃなく競馬を盛り上げるための忖度があったんじゃないかと」「結果“お目こぼし”ってか」。親爺が「ふ~ん」と声を出し首を捻り「勝てば官軍か!今の時代、強い奴が更に強くなって、そいつらを弱者が英雄視し、手を叩いて讃えるんだから凄い時代になったね」。年代を感じさせる空気がカウンター近くで淀んだ。


「ヴェロックスの金子オーナーは強者だけに悔しいだろうな。完敗ならともかく、とんだところでアヤがついたんだから」「アヤといえば昨日の新聞に出てたけどシャケトラが安楽死されたし『天皇賞』はどうなるかね」。そこまで言って「おっ、もうこんな時間か。ぼつぼつお嬢達も来る頃だし移る?」「そうだな。じゃあ酒も頼むわ」「あいよ。『洗心』でいいね」と親爺が答え、早速、残りの骨せんべいと酒を席に持ってきた。


差しつ差されつで、軽くグラスを上げともに一飲み。落ち着いたところで、再び「天皇賞」の話になった。根拠なんてサラサラ聞く気のないお嬢達が来る前に軸を決めておこうという考えだ。


「俺は川田のグローリーヴェイズからだな」。遠野が迷わず言うと「“シルク”の馬だけど生産はノーザンじゃないぞ。その辺がなぁ」「親爺に詳しく説明しても仕方ないが、関係なくもないんだ。横山君なら知ってると思うぞ。それより問題は金子オーナーのユーキャンスマイルの結果に注目だな」。


聞いた親父はキョトンとしていたが「昨年の『菊花賞』と同じように③着までに入れば問題なし。馬運が強烈ならそれ以上で、仮に掲示板を外すようだと、やはりアヤのせいかな、と。で今後の“流れ”が心配ってこと」。第三者は気楽なもんで、珍しく遠野も野次馬気分になっている。親爺は「俺は今度こそ、とのさんと横ちゃんのを参考にするよ」と言って立ち上がり、お通しの北寄焼きを持って来た。  饒舌だっただけに喉も渇いた遠野は立て続けに飲み干し、北寄に箸を付けた。「旨い!これはショウガ醤油?」「単純だけど意外とイケるだろ」。親爺嬉しそうだ。


「歯切れはいいし、ジュワッと甘みが滲み出て…。七味が生きてるしな」「とのさんが表現付きで褒めてくれるとは」。ヘヘッと笑った後「そういやぁ、この間はウオッカのことで清水さんの話ができたし、やっぱり競馬の話題は尽きないねぇ。たまには二人っきりで昔話を肴に飲み明かすのもいいかも」と言った途端ドアが開いてお嬢二人が入ってきた。


「お待たせしました」の挨拶に、それまでシンミリしていた親爺は、まさに豹変で、スックと立ち上がり「いらっしゃい!」と手を広げて抱きしめんばかりの喜びよう。まだ席にも着いてないのに「今年も鯛の桜葉蒸しを用意しているからね」。挙げ句、二人の靴まで揃えて上がり框の奥にしまうサービス振り。今日は井尻から社内情報を聞き取る積もりだったのだが、宴会の前からこの調子ではどうなることやら。


そんな遠野の思惑も梶谷は無視。「そうだ。忘れないうちにお願いしとかなくっちゃ。『天皇賞』も買いますのでよろしく」と。「はいはい。土曜日までには買い目を連絡します」。  


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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