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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年01月30日(水)更新

心地好い居酒屋:第60話

「今日は雅子は休みますので」――。ご丁寧に井尻から電話が入った。それも午前中に。初めてのことでもあり遠野はテッキリ<病気?インフルエンザか>と思いつつ「具合がひどいのか。大丈夫か?」と。「いえいえ体調は心配ありません。“嵐ロス”とでもいいますか、『遠野さんやおじさん達に迷惑をかけてもいけないし、かといって他の連中と飲んでも面白くないでしょ。阿部さんと憂さ晴らししてきます。二人には高兄ぃから謝っておいて』と言って…。で、まぁ親方の仕込みの都合もあるでしょうから、遠野さんと店に連絡を入れた次第で」。

井尻の申し訳なさそうな声と言い分に「へぇ!おまさちゃんと京子ちゃんが揃って“嵐ファン”だったとは。意外だけど分からん訳でもないな」。遠野が答えると「じゃあ、いつも通りで結構ですか」「むしろ中止した方がおまさちゃんも気を遣うだろ。行くよ。それより刈田が寂しがるんじゃないのか」。梶谷と飲む時の一喜一憂の態度と表情を思い浮かべた。「あいつには、まだ言ってませんが年明け初めての飲み会ですからね。遠野さんとご一緒するのを楽しみにしていますし…。もちろん横山と下川も顔を出す積もりでいるようですからよろしく」。ホッとした様子だ。

月曜日は昨27日までと違い、南風のおかげで寒さも和らぎ、過ぎた“大寒”より近づいた“立春”を感じさせる陽気に。「TMC」の男共とだけで飲むのも久々だし、自ずと気分も高揚してきた。さらに「頑鉄」に入ると、すでに横山が指定席に座り、隣には親爺が横座りしていて、お茶を前に話し込んでいる。時間はジャスト5時だ。遠野はますます嬉しくなった。

「おっ早いな」。声をかけると、驚いたように立ち上がり「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」。横山が深々と頭を下げた。「はい。おめでとう」と応じた後「堅苦しい挨拶は抜き。座って座って!」と言い「親爺!しばらく飲んでないし『洗心』にして。横山君も冷酒でいいだろ」。勝手に決めつけ自席に回り込んだ。

これが“阿吽の呼吸”というべきか。「あいよ」と応え、「とりあえずこれ。成田山のお土産」と言い“鉄砲漬け”を一皿置き、「洗心」を持って来ると、そのままカウンターに向かい冷えたグラス3個とお通しを運んできた。海鼠(なまこ)酢だ。

酒と食い物は早いもん勝ち―で、残り3人の到着を待たずグラスを満たし乾杯、一飲みして“鉄砲漬け”に箸を付けた。「“名物に旨いもんなし”が相場だが、これは旨い」。遠野が感想を述べると「俺が味見して買ったからな」。親爺、自慢気に胸を張る。つられて食べた横山も「美味しいです。初めて食べました」「白瓜の淡泊さをもろみ味噌と青唐辛子、それに青シソが補っているって感じだろ。やはり白瓜は千葉産だよ。これは夏に…」。黙っていれば延々と続きそうだし「ところで馬柱や牧場の件はどうなった?」。遠野が話の腰を折り、話題を横山に振った。競馬なら親爺も参加できる。

「この間、牧場と馬主さんの絡みなどを教えていただき、まずは馬柱に生産牧場を追記することを提案したんですが…」「金が掛かるって言われたかい?」。遠野が先回りすると、「えっ」と声を出し、掴んでいた海鼠を小鉢に戻した。「そうなんです。局長は『馬券検討の役にたちそうだな。考えておく』と前向きだったのですが、年明け早々に金山さんが『梯にも言っておいたがコストに見合うだけのメリットがないだろ。そんなことを考える暇があったら、もっと当てろ!運動部だって経費削減に頭を悩ましてるのに』ですから。嫌になっちゃいますよ」。憤懣やるかたなしの態。

もともとさもしい鮃(ひらめ)野郎で金魚の糞みたいな奴だったが、甘方の威光で自分が偉くなった積もりでいるのだから救いようがない。もっとも、一番悪いのはそんな奴を重用する上層部、そして甘方だが、現状で甘方の狡猾さを教えるのも憚れる。あの井尻でさえ、今のところ<ついて行く>気持ちがあるのだから。現に生産牧場と馬柱の件も、横山にとって甘方は悪者になってはいない。梅宮辰夫が羽賀研二を“希代の悪”と一目で見抜いたと改めて賞賛されているが、周りの評判は明るくて“いい人”。本当の悪こそ、なかなか尻尾をださないもんだ。

「先日“メイショウ”さんと『三愛会』、そして『三嶋牧場』との関係を教えていただきましたが、昨日の中京の6、7Rはそのコンビで②①着だったし、生産者を知るのは馬券検討だけでなく、他の楽しみや発見があると思うんですがねぇ」。不満そうに首を振り、やっと海鼠を口に入れた。

「昔は馬券と生産者は、あまり関係なかったが、今は“社台系”の天下。社台から買った高馬は放牧中もちゃんと面倒見てくれるし、休み明けでもいきなり走るだろ。成田山の“鉄砲漬け”と一緒で買って損ないもんな」と親爺。「はいはい。お上手。横山君、ほらテッポーとかけてるんだから拍手してやって」。遠野が冷やかしながら催促すると、緊張と不満もほぐれたのか「買ってきた鉄砲より店で調理した海鼠酢の方がウマイです」と。すかさず親爺が「参りました」で大笑いだ。

「冗談はともかく…。生産者もそうだが、せめてオープン馬は馬主が共同か単独ぐらいは読者に伝えて欲しいよな。馬柱をいじる訳じゃないし金はかからんだろ」「とのさんの言う通り。名義は普通の人でも社台が乗ってるかどうかでレースに対する陣営の思惑が違ってくるし。清水さんも『馬主がどこに照準を絞っているかを読め』と書いてたしな」。横山は年寄り二人の注文に「努力します」と頷き、遠野と親爺に酌をする。

親爺は受けた酒を一飲みすると「ぼつぼつ井尻さん達も来る頃だな。お~い。皮剥の調理始めてくれ」と指示、続けて「おまさちゃんが来られないのは残念だが」とボソリ。横山にも聞こえたのだろう。「“嵐”の一件で落ち込んでましたからねぇ。でも、会社では近寄りがたい雰囲気があった梶谷さんが“嵐”ファンと知って安心しました」とニッコリ。

遠野は<京子ちゃんもな>と言いたいところを我慢。「それにしても連中は大したもんだ。想定問答集で練習したかどうか知らんが、1時間以上も質疑応答を無難にこなしたんだろ。それに引き替え大人の情けないこと。JOCの竹田なにがしは喋るだけ喋って逃げるし、大臣なんて質問通告を受け、しかも役人にカンペを作ってもらいながらまともな答弁もできないんだから」と嘆く。

聞いた親父は「とのさんよ~。あんなのと比べるとおまさちゃん達に叱られるよ!」

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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