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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年10月28日(日)更新

心地好い居酒屋:第55話

遠野が「頑鉄」に着いたのは7時過ぎ。引き戸を開けると同時に暖かい風と雰囲気、さらに楽しそうな声と一緒にいい香りが届いた。<繁盛結構>で中に入ると、窓際の席に5人が居て盛り上がっていた。親爺が「最近よく使ってくれている」と喜んでいたゲーム屋一行だ。黙礼しつつテーブルに目を遣ると果たせるかな土瓶蒸しと、松茸の焼きが置かれている。酒はスコッチ・「バランタイン」と麦焼酎・「壱岐」。<なるほど、親爺が言うように上客のようだな>。納得しながら指定席に向かった。隣には「予約席」の札が。

お嬢二人と井尻はすでに到着、何故か井尻の瓶ビールを分け合って飲んでいる。「遅れてごめん」詫びつつも「珍しい。お二人がビールとは」と。「あ、今晩は。お先に」と3人が声を揃えた後、「いえね。焼き松茸は遠野さんがいらっしゃってからとのことですから」。梶谷が言うと、阿部秘書が引き取り「先月と違い最近冷えてきましたし、この陽気なら焼きには熱燗が合うんじゃないかと」「で、待ってくれてたんだ」。遠野が感激すると、親爺が「凄いよね。京子ちゃんとお雅ちゃんの心配りと酒飲みの心得は」。井尻はきょとんとし、年寄り二人は驚くしか術はない。

「だって取り置きの『得月』も飲みたいし、遠野さんお得意の『千寿』の熱燗も捨てがたいでしょ」と梶谷。「でも、こうしてお八つ代わりにピリ辛の焼き蓮根や蒟蒻煮を摘まみながらチビチビ飲み、楽しんでダベッていましたのでお気遣い無く」。阿部秘書がフォローする。「じゃあ、お言葉に甘えて熱燗を」「へいへい」と答え親爺が立ち上がった。 先着3人と親爺の話題は、先日、親爺が愚痴っていたお茶屋さん事情。もちろん梶谷はお茶屋の何たるかは説明も受け、自ら調べもしたが、阿部秘書は経費の関係で知っていたらしい。もっとも「完庶処」は仕入れの内容もケタも違うのだが、それでも豊洲は色んな意味で不便だとか。

「あ、そうそう『菊花賞』は損させて悪かったね」。遠野が梶谷に謝った。「おじさんにも言いましたが、とんでもないです。勝手に乗っただけですから。でも武豊が②着に来てくれれば当たっていたのに……」「あれ、済んだレースのタラレバはダメ!と横山君に説教したのは誰だったっけ」。遠野が恍けた。「そうでした。終わったレースより次が大事。今週の『天皇賞』も乗りますからよろしく」。本当に買うみたいだ。

「ところで甘方とは上手くいってるのか」。井尻は不意を衝かれて、思わずビールを吹き出しそうになったが、タイミングよく仲居が白子と焼き松茸を、親爺がビールに熱燗2本と猪口を4個運んできて、そのまま座り込んだ。

おかげで落ち着きを取り戻した井尻が4人に酌をし、親爺からビールを注いでもらう。揃ったところで、全員が軽く器を上げ“飲み会”が始まった。阿部秘書と梶谷は、まず松茸の香りを楽しみ白子に箸を付けた。遠野は一杯飲んだ後、梶谷の酌を受けながら、目で井尻に答を促す。親爺は松茸に酢橘を搾り、お嬢二人に勧めている。

「大丈夫です。声も目もかけて貰ってます。はい」。自分で頷きながら蓮根を食べ、ビールを飲んだが「ただ…」口籠もった。「ただ?何?」「いえ、大したことじゃないのですが最近は、仕事とは関係なく誘われる機会が多くて」「飲み屋か?」「だいたいが」。すると、松茸の食感を楽しんでいた梶谷が慌てて、酒と一緒に流し込み「まさか赤坂には行ってないでしょうね高兄い」と聞き咎めた。

「何だよ急に。そんなとこまで行かねぇよ」。売り言葉に買い言葉で井尻もきつい口調で返した。「ならいいけど…」。ホッとした様子で裂いた松茸を口にする。今度はゆっくり味わうようだ。「お雅ちゃん、赤坂がどうしたの?」。遠野も気になって尋ねると「ホラ、先月お会いした時『今後は音声より映像の時代よね』と“梶”と一緒にお話したでしょ」。阿部秘書が話を引き継ぐ。二人の連携は相変わらずの驚嘆ものだ。「そんな話をしたのは、局長と若い女性が仲むつまじく歩いているのを赤坂で目撃し、クラブらしき店に入ったのを録画したからです」。そこまで言うと、親爺が注いだ酒を飲み干し微笑んだ。

「素晴らしい!さすが京子ちゃんとお雅ちゃん」。親爺が膝を打ち「刺し身も仕上がった頃合いだし、ぼつぼつ『得月』にするか」。自分で気合いを入れ取りに行った。遠野は梶谷に向け首を振り、前回聞いた不正らしき伝票の件は<まだ内緒にしとく>ことを伝えた。井尻は“黙ってサッポロ”状態にある。

そこへ刺し身と「得月」が届き、遠野は最後の熱燗を飲み干し、「ふぅ~」と息を吐いて、呟いた。<霜を履(ふ)みて堅氷至る>―か。

親爺はうんうんと頷きながらグラスを並べ、それぞれに「得月」を注いだが、残り3人は“何、それ?”って感じで遠野を見詰めた。鰤や秋刀魚の刺し身はもちろん、グラスにも手を付けてないぐらいだから興味があるのだろう。 「“霜降”(23日)が過ぎると次は“立冬”(11月7日)。異常気象だったとはいえ二十四節気もバカにしたもんじゃないし、寒さも徐々に増してくるってこと」。遠野が説明して「得月」で喉を潤すと、黙って聞いていた親爺が口を開いた。「そういやぁ昔、そんな諺らしきものについて清水さんも解説してたなぁ。確か『何にでも兆候があり、放っておくと、いつの間にか取り返しのつかないほどに膨らむもんでな』と」。<間違ってないよな>って顔で遠野を見、自分もグラスを口にする。

「言わずもがな、とも思ったが、、甘方は派閥作りもお盛んで、行動は大胆。少しづつ“悪”も大きくなって行きそうだぞ」「そうかぁ。局長からは目が離せないですね。高兄いは変に深入りしないでよ」。納得した梶谷が、続けて「それより『天皇賞』は何を買うんですか」と。「俺は去年の『ダービー』で勝たせて貰った④レイデオロから。親爺は⑥マカヒキだろ?」「『現役中は買う』と前々から公言してる通り」。親爺に迷いはない。「今度の日曜日は休みでテレビ観戦もできるから私も買おうかな」。横から阿部秘書が会話に参加、早速1000円札2枚を取り出し「お願いします」と遠野と親爺に手渡した。

「えっ!京子ちゃんも参加するの」。一瞬ドギマギしながら親爺、残っていた焼き蓮根を摘まみ上げた。

被告席に居たような気分だった井尻がポツリ「まさに“一蓮托生”ですか」―。

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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