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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年09月13日(木)更新

心地好い居酒屋:第52話

 遅くなるほどに雨も強さを増す―。との予報が頭にあったようで10日の月曜日は、珍しく下川を除く全員が6時前には「頑鉄」に集結した。ただし単独の一番乗りは横山で、遠野達がほぼ同時に入り、それぞれ指定席に腰を下ろすと、遠野と梶谷の間に4合瓶2本が鎮座していた。見ると「純米大吟醸・男山」と書かれている。北海道を代表する日本酒の一つだ。 「どうした?これ横山君?」。遠野が訊く。「ええ。祖父が『その何とかさんという先輩に持ってけ』と言いましてね」「これ、地元でもなかなか手に入らないんじゃないの」と遠野。「個人ではそうですが、懇意にしている酒屋に頼んだみたいで」「ふ~ん。それはそれは有り難いことで…」。遠野が言ったところに親爺と仲居がお通しにビールと「黒霧島」、それにグラスと氷を運んできた。盛り沢山のだだちゃ豆はサービス。

「詳しい話は後でということで、とりあえず開けようや」と親爺が酒のキャップを取る。井尻は例によってサッポロの黒ラベルの瓶。刈田が焼酎で遠野、親爺、梶谷、おまけに横山までもが冷酒党になっている。

 「久し振り」の言葉と同時に形ばかりの乾杯をし、一口飲むや「『札幌記念』は…」。横山が言いかけたのだが、遠野が手で制し「それより実家は大丈夫か。大変だろ」。地震を心配する。「有り難うございます。ええ、6日はたまたま追い切りの日で、自分も4時過ぎに起きてテレビを点けたらあの騒ぎでしょ。さすがにたまげて電話しました」と言い「男山」をグビリ。社内の連中はすでに話は聞いてるみたいで、飲み食いに専念し、梶谷に至っては「少し辛口だけどスッキリして美味しい。それに、この鰯のゴマ漬けとの相性もピッタリ。どう?刈田さん」「あ、うん。焼酎にも合うね」。惚れた弱味かギコチない反応を示す。別世界に居る。

 遠野と親爺は「それで」てな感じで続きを待った。「最終的には水と電気に不自由してるだけで体も家も事なきを得たようですが、直後はさすがに揺れと停電には慌ててたみたいで」「そうだよな」「ただ震源と規模や停電状態はスマホで知って少しは落ち着いたとか」「なるほど。情報が入れば心理的にも少しは安心するわな。スマホなんて弄(いじ)れない俺達は“運天”で寝とくしかないなぁ親爺!?」「違えねぇ」とハゲ頭を叩きながら笑い「でも被害に遭った人には申し訳ないが、大事に至らなくて良かったよ」続けて「今日は秋刀魚はなし。いい皮剥があったからと」言い立ち上がった。 「ところで刈田んところは大丈夫だったか?広島・岡山の大雨の時、帰省ついでに見てきたんだろ」。梶谷から酌を受けながら遠野が訊く。話を振られた刈田は「気に掛けていて頂き恐縮です」。覚えていた事に驚いたようだ。頭を下げた後「お陰さまで日本海側はさほどではなかったのですが、岡山の真備のほうは見るも無惨な状態で。今も住めない家が多く、それにあまり報道されてませんが、有害な粉塵がひどいらしく呼吸器系の病気が増えてるとか」。隣県のせいもあるのか惨状を目の当たりにしたせいか顔を顰めて憂えている。

「次から次に災害が起き、テレビは愚にもつかないスキャンダルで大騒ぎだし困ったもんだ。<知らせるべきは何か>を考えて報道して欲しいよ」。だだちゃ豆を放り込みながら遠野が憤慨すると「わぁ。今日の遠野さんはすごく真面目。そうなんですよね。久し振りに遠野さんの反骨や純粋さと優しさが感じられて感激です」と梶谷。「バカもん!大人をからかうんじゃない」。遠野が怒った振りをすると、チラッと舌を覗かせ微笑む。井尻と横山は苦笑いで、刈田は下を向いて無言。ロックに代わっていた。

 皮剥と肝は親爺を入れた人数分ある。刺し身も縞鰺と鮪を、焼きも用意しているらしく、いよいよ親爺も座り込むハラだ。席に戻るとグラスを差し出し梶谷の酌を強制した。「はいはい。どうぞ」と瓶を傾け「横山君のお土産、お酒もそうだけどこの間のウニといい美味しいですよね。近いうちに様子見で札幌に帰ったら?」

「冗談じゃなく、帰ろうかなとも思ったのですが、祖父いわく『<不自由を常と思えば不足なし>。こっちは大丈夫だから、しっかり秋競馬でいい仕事をしろ』と励まされました」。 ふんふんと頷いていた親爺。「偉い爺さんだ。俺も清水さんから教えてもらったんだが、徳川家康はこうも言ってるぞ。<及ばざるは過ぎたるよりまされり>」。エヘン、どうだ!って感じで胸を張り、グラスの酒をあおぎ、皮剥の身を肝醤油に浸した。 「そうだなぁ。<衣食足って礼節を知る>と言うが、今は<衣食満ち足りて礼節疎(おろそ)か贅沢三昧>だからな。お互い気をつけよう」。梶谷からからかわれたセイでもあるまいが慎重な物言いだ。

「そう。だから、今日は俺も秋刀魚は避けたんだ。高すぎるし、第一、根室の秋刀魚は出てねえもん。とのさんが今度来るときは手頃な値段で旨いの用意するから」「今度とはいつ?」と梶谷。「決まったらお雅ちゃんには連絡します。今日は褒めて貰ったことだし」と遠野。

「あ、そうそう。大事なこと忘れていました。『札幌記念』の晩はパークホテルの中華で傘寿のお祝いをしたのですが、武邦先生の話をしたら、次の晩は早速家で“豚シャブ”。日本酒タップリの。これが美味しかったんです。祖父も大喜びでこれから冬にかけて鍋を囲む機会が増えそうですよ。『その先輩によろしくと伝えてくれ』と言ってました」

「パークの中華とは豪勢だな。何人だったか知れんが『桃源郷』だろ」。遠野が訊くと「日程は決まっていたので予約も早めということで。それにしてもどうして…」と横山。「だから、この間も、ほら『札幌記念』とヒデカブトの件の時“この程度で驚くな”言ったろ」。親爺が「なぁ」と遠野を見る。「な~に“邦ちゃん先生”を含め当時の競馬関係者はパークと『桃源郷』をよく使っていたから知っているだけのこと」

横山も子供の頃から“食”に関しては満ち足りているのかも知れない。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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