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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年07月11日(水)更新

心地好い居酒屋:第47話

あくまでも遠野の論理で、世間に通用しないのは百も承知だが喫煙は“百害あって一利なし”には異議がある。神経を落ち着かせ、働いた脳を休ませるのも煙草。仕事が一段落した後や食後の一服は何にも代えがたい喜びだ。しかも小道具としても使えるのだから便利なことこのうえない。そんな効用をすべて無視、喫煙は悪、喫煙者を極悪非道な人間のごとく扱う風潮は如何なものか。禁煙を実行した今もそう思う。

桂歌丸が亡くなった。死因は慢性閉塞性肺疾患。有り体に言えば遠野が抱える肺気腫である。喫煙が大きな理由だろう。“ここぞ”とばかりに禁煙運動が盛り上がりそうだが、では色街で育った歌丸が、仮に煙草を吸わなかったとして、どんな人生を歩んだか。多様性があってこその人生であり落語だ。新作から古典までこなした桂歌丸。「あんな苦しい思いをするのは嫌だ」と言い、最後の最後で止めたらしいが、それまでは恐らく煙草を吸い、煙管を吹かせながら妙案を絞り出していたことだろう。

何もできない長生きより名を残した81歳の冥福を祈ろう――。

なんてことを思いながら「頑鉄」に到着した遠野。九州、四国、中国地方に大きな災禍をもたらした翌9日の東京は大暑を前にして灼熱の太陽が照りつけた。遠野はひたすら日が落ちるのを待ってでかけたため、すでに梶谷、井尻、それに本日の主賓ともいうべき横山が席につき枝豆と蜆の佃煮を前にビールと焼酎で喉を潤していた。刈田は実家の鳥取が心配とかで、大雨の取材を兼ねて帰省中らしい。

遠野が「お待たせ」と言い梶谷の後ろを回って指定席に腰を下ろすと、すかさず親爺が「洗心」と木箱を運んできた。中身は利尻・礼文島産の「エゾバフンウニ」だ。

「遠野さんから電話を入れていただいていたおかげで、お店も丁寧な待遇で、仲間も喜んでくれましてね。それにお勧めの『ウニ』が美味しくて。北海道出身の自分でさえ初めてです」と横山。

函館競馬出張が決まった時、遠野から「チョッピリ値は張るけど、馬券で儲かったら朝市の中にある『むらかみ』って店に行ってみな。浜焼きコースも旨いし、何より『ウニ』だな」と言い、店に電話しておいたのだ。

煙草論はさておき、人間はどうして酒を飲むのか――。なかなか結論の出ない命題ではある。

<そこに酒があるから飲む><喉が渇くから飲む><酔うために飲む><不安を解消するために飲む><大きく見せるために飲む><忘れるために飲む>……。いろいろあるのだが、今日の「ウニ」を見、そして食べると究極の結論が出た。

<旨い肴があるから飲む>

それぞれがスプーンで掬って取り皿に移し口に入れる。唇で軽く押さえ舌に載せる。「美味しい」「旨い」「甘い」。一様に声が洩れた。親爺も「う~ん。これじゃあ酒も進むなあ」と唸る。

「利尻のエゾバフンウニは漁期は6~8月と決まっていて、まさに今が旬。というかこの3ヶ月しか食べられない…そうです」。横山が説明すると「ミョウバンは使ってないし、このコクと甘みは別格だな。高かっただろ」と親爺。

焼酎・「黒霧島」から日本酒「洗心」に代えた横山が“よくぞ訊いてくれました”と言わんばかりに身を乗りだし「函館の最終R馬連①②を2000円取ったんです」「いくらついたの?」「4230円です。馬券代が1万円しか残ってなくて。『シルク』の2頭が断然人気で②⑧は270円。1点買いも考えたんですけど、当たっても土産代は出ないし、②⑧は元取りで5000円、①から『シルク』の2頭に2000円ずつ買い、『サンデー』の1頭に1000円買ったんです」。訊いてもいないことまで喋っているのは嬉しかった証拠で、まぁ自慢話だけじゃなく、ちゃんとその金で「ウニ」を買ってきたのだから、このくらいの講釈は許してやるべきだろう。梶谷はこれ幸いと一人スプーンを頻繁に使っている。井尻は喫煙か電話か定かじゃあないが外に出た。

「それにしても、よく①から買えたねぇ」。「ウニ」を食べながら遠野が褒めると、さらに喜び「『シルク』と『サンデー』が牽制し合っての仕掛け遅れの前残りに期待したんです。それに、たまたま武幸厩舎の馬でしたから。これも何かの縁と思って」「縁?」。遠野が訝(いぶか)ると「あれ!遠野さんに報告していませんでしたっけ。実は、自分の祖父が大の武邦彦さんファンでして…。だから自分の“邦彦”も祖父の命名。本当は“豊”にしたかったらしいのですが」。今日はたくさんの話ができて上機嫌だ。

黙って聞いていた親父は「ウニ」をひと掬いし、酒を飲み干すと席を立った。次の料理を持ってくるのだろう。

「じゃあ、横山君は血統書付きの競馬ファンだ。それにしてもお爺さんが邦ちゃん先生ファンだったとはねぇ」。さすがの遠野も横山の話にはビックリだ。「あの~。遠野さんは今、“邦ちゃん先生”と言い、時々“豊ちゃん”とか呼んでますがお知り合いなんですか?」

「ん?知り合いといえば知り合いかな。私的には“邦ちゃん先生”との方が親しかったかも。日高の牧場で結構、ご一緒させてもらったからね。浦河には結構行ったなぁ」。そう言うと、遠野も昔を懐かしむように意味もなくうなづきグラスの酒を飲み干した。

「凄いですねぇ。何かエピソードみたいなことを聞かせていただければ、祖父に自慢話しができるんですが」。どこが凄いかよく分からないが熱狂的なファン心理とはそんなものかも知れない。

「そうだねぇ。面白いかどうか分からんが、ボケ防止のために思い出すよう努力するよ。ただ、どうもハッキリしないのが喫煙でね。俺の感覚では“邦ちゃん先生”は吸わなかったようなんだが死因は肺ガンだろ。どうも納得できなくてな。いずれにせよ今日は『ウニ』ご馳走さん」と言い、テーブルを見ると、ほぼ完食状態。右に目をやると梶谷が「美味しかった」とニッコリ。この日だけは親爺の自慢の肴もチョッピリ霞みそう。

煙草は吸えなくなったが、こうして仲間に囲まれ旨い酒と肴を楽しめるのだから暑いだの、息苦しいだの泣き言を言うと罰が当たりそう。感謝しなければなるまい。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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