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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年06月03日(日)更新

心地好い居酒屋:第44話

痛い所を突かれたり、疚しいことがあると、大概の人間は早口を伴い気色ばむ。あるいは虚勢を張る。かと思えば能弁、いや多弁にもなりがち。

故・竹下登総理は言語明瞭・意味不明で聞く者をケムに巻いたものだが、それなりに心は広く愛嬌があった。遠野も出席した30年ほど前の結婚式で聞いた挨拶は秀逸だった。いわく<挨拶は短く 幸せは長く ―。○○君おめでとう>。それだけだ。式場は一瞬静まり、すぐに爆笑と拍手に包まれた。以後、たまに同じフレーズを耳にするが、この言葉は元・総理を以て嚆矢とする…と思っている。

翻って長州の現役総理はといえば言語虚偽・語彙グシャグシャ。聞く者を不快にする。

<そういう中において、私や妻が関係していれば、これはもう、まさに議員はもちろん総理もやめますよ>――。森友学園との関わりを問われた時の反論である。その後の、加計学園開学に向けて“総理の意向”うんぬんのケースでもしかりだ……。

本人のウソが周りを巻き込み、当人を守るためにウソの上にウソを塗り重ねている様相だが、当の本人にはウソをついたという認識がないのだから罪深い。ウソも100回つけば真実になるという説もあるが“これはもう、まさに”その説を信じるしかない“訳であります”。

性善説の親爺は過日の証人喚問前に「本当のことを喋る方に賭ける」と最後までかすかな希望を持っていたが、結局は“良心”を母親の腹の中に置いてきたようだ。知らぬ存ぜぬで通した鉄面皮・佐川なにがしが不起訴になった。大阪地検は不起訴にあたって多弁を用い、その理由を説明した。屁理屈であり異例なことだ。これまた行政・司法を力でねじふせられた無念さと疚しさの表れか。それとも迎合か―。

ダービー前の「頑鉄」通いの時と同じように、この日(6月1日)も“まさに”薫風が吹き抜けていたのだが、当時と違って爽やかさはなく遠野の心は晴れない。築地駅に降りてからも気分は優れず、本願寺に立ち寄り、心を鎮めて「頑鉄」に向かった。

着いたのは6時過ぎ。すでに美女二人に井尻は席に居て、それぞれの前にはスマホが置いてある。どうやらお茶を飲みながら日大絡みのテレビを見ていたようだ。「貧しい大人が多すぎますよねぇ」。美人秘書が憂う。「加計、森友、それに日大。そろいも揃って教育者がウソで塗り固め、金と権力まみれになってりゃ世話ないよ」と、遠野は応じ、続けて「お礼が遅れて申し訳ない。先日はご馳走さまでした。京子ちゃんとおまさちゃんのおかげで久々に楽しいゴールデンウィークを過ごせたよ」。

お絞りを使っていると親爺が「京子ちゃんところほどではないけど」と遠慮がちにさつま揚げを持ってきた。「確かに『完庶処』のは旨かった。7、8種類は使ってるだろうし自慢の自家製だけあるね」「有り難うございます」と美人秘書。お通しはサーモンとオニオンスライスのサラダで刺し身は鯒、ホウボウ、鮪だが「今、鰯のなめろうを作ってるから」と。「親爺悪い。なめろう作るんなら、つみれ汁の分も頼む。後で酔い覚ましに飲みたいから」。遠野が注文すると、すかさず美女二人が「私も」と。

酒はといえば「富久長」だ。「ヘヘッ。まだ京子ちゃんには飲んで貰ってないから」と言い、梶谷の前に―♫おかげさまで♫―と印字された白い封筒を差し出した。

遠野と井尻は納得だが、美人秘書は親爺と梶谷の顔を見て怪訝そうな顔をする。「富は久しく長くで『富久長』。親方、『皐月賞』で万馬券を当て、その時、縁起をかついで、この酒仕入れたんです」。井尻が説明すると「じゃあ、縁起よく『ダービー』もうまくいったんですね」と美人秘書。遠野は竹下の<幸せは長く>を思い出していた。続けて「で、これは配当ですか」。梶谷の封筒を指さす。

「さすが阿部さん。相変わらず鋭いなぁ」。そんな会話を聞きながら、梶谷が徐(おもむろ)に封筒から金を取り出す。8000円だ。「いいんですかぁ。こんなに」「な~に。うまく買えば、この倍渡せたんだが」。親爺、謙遜気味だが自慢気でもある。「ねぇねぇ聞いて阿部さん。遠野さんと、競馬担当の横山君ってのに乗って、当たったのはおじさんだけなの」と言い、チラリ舌を覗かせ上目使いに遠野を見る。「すんませんねぇ。予想が下手で。今度から親爺に乗るよ」。ぼそぼそと言い、一口飲むと「なめろう、まだ?」「あっ!遠野さん拗ねたみたい。でも可愛いですよね」と梶谷。邪気がない。前回会った時の鮪や新子とコハダの話も十分ありうる。

「だから、今日は阿部さんの分は私の奢りですから遠慮無く」「はいはい。“梶谷さん”の仰せの通りで。じゃあ早く酌をして」。銀行時代からの親密さが窺い知れる雰囲気と会話だ。冷酒を一杯付き合っただけで、後はビールに専念していた井尻がおずおずと口を開いた。「実は…。局長から誘われまして。『月曜日空けといてくれ。いろいろと話もあるし、それより何より井尻とは暫く飲んでないもんな』」と。「ほう。いよいよ唾を付け始めたか?で?もちろん行くだろ」。遠野は梶谷の酌を受けながら「すんませんねぇ」とおどけ「折角、目をかけようとしてるんだ。断る理由はないし、何を喋るか、どんな飲み方をするか観察してこい」と言いグラスの酒を飲み干した。

「局長、録音しますかねぇ」。不安げに尋ねる。「知らん。そんなの関係なく普通にしゃべりゃあいい。下手に迎合したり、同僚や上司の悪口は言わんことだな。それともお前もコッソリ録るか?」「いえいえ。滅相もないです」。緊張して喉が渇くのかしきりとビールに手が行く。

「この間もあのウソつき総理が『音声も映像もない訳でありまして』なんて平然としていましたが、ウソつきだらけのご時世では必要かも。簡単ですし」と美人秘書。受けて「話は違いますが、あんなに官邸絡みのスキャンダルが発覚しているのに、日大のウソつき監督のおかげでテレビは日大のオンパレード。いったいテレビも何を考えてんだか」と梶谷。

「頑鉄」では、できるだけこの手の話はしたくなく、だから本願寺で時間を潰したのだが…。考えは一緒、避けて通れない事実と分かりホッと一息だ。

「これでもか!と言わんばかりにタックルのシーンをタレ流すんだから視聴者の興味と関心も集まるわなぁ。その分、加計に森友と改竄のニュースが減るし、官邸は日大さまさまだな」。できあがったなめろうを手に親爺も憤慨する。全員に配り終わった途端、親爺が「あっ」と声を出し「そう言やぁ日大の創設者・山田顕義ってのも長州出身らしいぞ」


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。