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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年04月08日(日)更新

心地好い居酒屋:第40話

昨5日は24節気で言えば「清明」。これから20日の穀雨までは、すべてが清々しく明るい――はずなのだが、この日(6日)の「頑鉄」の指定席は静かで笑い声がなかなか聞こえてこなかった。まさか、外の雨のせいでもないのだが…。

美人秘書の登場は昨年の4月21日。親爺も記念すべき一周年は百も承知でメニューは当時とほぼ同じ。始めて来た日に気に入ってもらった「明石の桜鯛の桜葉蒸しも用意しているから」と場を盛り上げようとしたが、その親爺の言葉つきからして張りがない。

親爺を含め全員が揃い「お久しぶり」でビールと「洗心」で乾杯、お通しのうどと筍の味噌和えを食べ始めたまではいい。ここまでは去年と一緒で阿部秘書も仕事のプレッシャーから逃れられ、ノンビリできて楽しそうにニコニコしていた。しかし遠野の親爺への一言がムードを変えた。「親爺の賭けは予想通り負けだったな」――。これに反応したのが阿部秘書だ。刺し身の盛り合わせの中からシマアジを摘まみながら「どう言う意味?どんな賭けをしたのですか?」と遠野の方に顔を向けた。

「いえね。先日、証人喚問の前日『TMC』の連中ときた時、親爺が『佐川の良心に賭ける』と真相解明に期待してたんだ。オレは『自殺はニュースで知った』なんてシレッとしてほざく奴に普通の人間の心はないよ、と言ったんだが」。ことの顛末を説明した。

「その結果があの、人をバカにした答弁だったわけですか。でもぉ~」と顔を傾け「私みたいなのが言うのも烏滸がましいのですが、やっぱり、おじさんは善い人ですね」「へへっ。京子ちゃんにそう言ってもらうと嬉しいけど。それにしても…」。阿部秘書に褒められながらも、納得のできない表情を崩さないのは、親爺もよほど人間性に呆れているのだろう。

「私、先週土曜日(31日)の『報道特集』(TBS)を観たけど、フランスのル・フィガロ紙の記者が面白い表現をしていたわ」。梶谷が「洗心」を空けた後の猪口を遠野に差し出しながら続ける。「『こんなことが起きるとフランスでは政権が潰れる。佐川の忠誠心は総理や麻生へ対しての(忠犬)ハチ公メンタリティ』だって」と番組を振り返り、遠野の酌で満たされた酒を旨そうに飲み干し、メジ鮪の刺し身に箸を伸ばした。

「まさに言い得て妙だな。それに比べ日本の新聞記者は情けない。読者が知りたいことを記者会見でも質問しないんだもん。井尻さんも頑張ってよ」「そ、そんな事言われても記者クラブに入ってないのは親方も知ってるでしょうに」と言い、遠野に助けを求めると「まぁ<盗跖の狗(いぬ)尭帝に吠ゆ>ってな!。そう思って諦めるしかないか」

これには、さすがの才色兼備の二人と知ったかさん、そして親爺も理解できなかったみたいで、怪訝そうな顔で遠野を見詰めた。

「要するに飼い主が大泥棒でも狗は飼い主にだけ忠実で、尭帝みたいな聖人君子にでも吠えるってこと。詳しい意味は後で検索してみれば。いずれにせよ因果を言い含めて説得したんだろうなぁ」「もはや公僕なんてのは死語だな。役人が尽すのは政治家のみ。ワシらは聖人じゃないが税金の取り立ては容赦ねえからな」。先月「確定申告」を済ませた親爺が溜め息混じりにつぶやく。

その後も愚痴、憤怒、義憤、諦観……の言葉が続出。そんな沈滞ムードの流れを変えたのが阿部秘書だ。焼きそら豆を莢から手際よく取りだし口に入れると「そうそう。古い友人が最近離婚しましてね。その人がに言うには『顔じゃ食えないよ』って。容姿に惹かれて結婚したんですが『稼ぎと知識、知見が少な過ぎた』と笑って報告してくれたんです」。

思わず「それって女性ですか」と井尻が聞き返すと「そう言った積もりですけど」。平然として答え、新しいそら豆を食べ、酒を飲んだ。全員が「なるほど」と頷く。

稼ぎも必要だが生き様も大切。<ハチ公メンタリティ>を続けて、それで稼がせてくれたからといって本人と家族は幸せかどうか―。もっとも、そんなことに他人が容喙することじゃないが。

みんなの気持ちが吹っ切れた時に目光の唐揚げと一緒に「黒霧島」のボトルが運ばれてきた。

「じゃあ改めて飲み直しましょ。井尻さんも、たまには焼酎どうですか?」。阿部秘書が悪戯笑顔で勧めると、一瞬ピクッと眉を動かし「新燃岳の収束を願っていただきます」。「お、部長ともなると洒落た言葉がでるなぁ」と遠野が言うや否や、梶谷が5人分のロックを作り始めた。

「局長も井尻さんのように、もう少し空気や状況を読めて口だけでも”気遣い“できれば考え方も変るんでしょうがねぇ」。阿部秘書がロック片手に独り言のように言う。「えっ。また何か変化があったんですか」と慌てて井尻。阿部秘書は「仕事の話は今度また」と言い唇に指を立てた。

「そうだよ。井尻さん。そんなことより桜花賞はどうなの?とのさん」「バカバカしくてオレは買わない。18頭中16頭が社台がらみじゃやってられんよ」「気持ちは分かるけど…。ラッキーライラックは①枠がアダとなり包まれるってことないかなぁ」「誰があの勝負服をわざわざ押さえ込みに行くの?」。これで桜花賞の話題はチョンとなり「じゃあ皐月賞は」と親爺。

「唯一社台に対抗できると思っていたダノンプレミアムがあんなことになるし、社台には逆らえんよ。ただ、馬券は面白くなりそうだから買う積もり。今んところは抜け上がりでステルヴィオにするか社台を蹴ってエポカドーロ、軸はどちらかだな」

素直に親爺はメモっている。善人だな――つくづく思った。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。