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競馬コラム

心地好い居酒屋

2017年10月31日(火)更新

心地好い居酒屋:第30話

まるで田んぼ。あれほど馬場が悪くなると字ヅラで見る道悪の巧拙なんてアテにならない。そんな状況で馬券を買い、ヤラれた日には目も当てられないし…。悩んだ末に遠野は「天皇賞」をケンした。

結果は周知の通りだが、久々に強い馬が強い競馬をし、そして条件をフルに生かした、これまた強い馬との一騎打ちには、さすがに熱くなった。今更ながらではあるが、競馬にはギャンブルを超越した何かがあることを再認識した。もっとも、だから半世紀も競馬を続けているのだが…。

<キタサンファンの親爺は大喜びだろうな>と思いつつ、ブルゾンの襟を立て木枯らし一号の中、「頑鉄」に行くと「らっしゃい」と迎えたものの張りがない。「おめでとう!強かったなぁ」。遠野からの問いかけに「う、うん。でもなあ~」。反応が鈍い。外れたか配当の安さに落胆したのかと心配していたら「新聞で見たんだが、まさか、サブちゃん(北島三郎)が山口に選挙の応援に行ったとは…」。憮然とした顔付きだ。

美人秘書=阿部京子との“友達”関係以来、その感化で親爺も長州嫌いが顕著になった。親爺は昔からサブちゃんのファンだし、当然キタサンブラックとサブちゃんはセットで応援してきただけにサブちゃんが政治に、それも山口に絡んだことが気に入らないみたい。馬に罪はないものの、これまで通り、素直に応援できなかったのも無理はない。

「で、どうしたの?」「あの大雨だし、わざわざ場外まで行く気もしなくて、馬券は買わなかったよ」「なるほどなるほど。京子ちゃんに操を立てた訳だ。親爺は偉い!」。遠野が共鳴すると「まぁ正直言って、配当が900円で納得したよ。どうせ相手本線は社台にしていただろうし、サトノとの②⑦じゃあ万が一当たっても損だったかもな」と言いながら、やっと笑みがこぼれた。「ところで、とのさんは?」「理由は違うけど俺も馬券は買わなかったよ。でもタダであれだけのショーが見られたんだから、それだけで十分だったな『天皇賞』は」。

あと2戦するらしいが、「ジャパンC」「有間記念」ともに「キタサンブラックは買わない」と親爺。都議会選挙の“せごどん”の応援同様、阿部京子の威力恐るべしである。

意地だからだろうが、あの田んぼを激走した後だけに、疲労が残るやもしれず、もしかしたら買わないのが正解かも。

時間は6時前。まだ早く客?はカウンターの二人っきり。若い板前、確か吉野だったが、親爺と目が合うと、頷いて生イクラとおろし大根を目の前に差し出した。「食ってよ。今年イクラが高くて…。悪いけど皆んなの分までは」。申し訳なさそうに頭を下げる。「折角だからいただこう。じゃあ始めようか。『八海山』ちょうだい」。

今日のお通しは戻り鰹と新じゃがの煮物だ。「あ、とりあえずは、これで十分。後は連中が来てからにして」と言い、親爺と二人グラスを合わせた。「それにしても、京子ちゃんは凄いよ。よほど信用されてるんだな」。親爺、(10月)13日の出来事を思い出している。彼女の報告はこうだ。

「きのう(12日)甘方局長がいらした時、有村が『明日から宮崎出張で』と言うと『里帰りですか。温泉でノンビリできたらいいですね』なんてお調子を言っちゃって…。有村は『ええ、まぁ』で苦笑いしてましたが」「内心は空気を読めない奴だと」と遠野。「そうなんです。あれだけ新燃岳の噴火が騒がれているのだから、せめて『薩摩芋畑がご心配ですね』ぐらいの言葉が出ないようでは…ネ」。「局長が帰った後の社長はどうだったんですか」とは井尻だ。と、ニッコリ笑って「有村は『広告の契約はいつまでだったっけ』。どうやら見直す積もりですよ」。井尻にすれば、直接関係ないとはいえ甘方→別部についての極秘情報は重要ではある。ついでながら、残っていた2本の「得月」は一時間弱で空になった。

「あの後、“知ったかさん”一人でやってきてな。『親方はどう思う。自分はどうすればいいんですかねぇ』なんてブツクサ。俺に深い事情が分かる訳じゃなし『とのさんに相談したら』と言っておいたけど…。電話なかった?」「まさか。電話で話すことじゃないだろ」。

“噂をすればなんとやら”で、井尻以下が入ってきたのは二人の会話が終わった時だ。

横山は「ご無沙汰してま~す」で元気いっぱいだが、井尻の顔は冴えない。立ち位置で悩んでいるのだろうか。かといって、今日は刈田に下川も居ることだし、まさか局長の話はできまい。事情など百も承知なのに梶谷は素知らぬ態で「お久しぶりです」と微笑み遠野の隣に座った。

全員が席に着き、それぞれの飲み物が揃うと、親爺も腰を下ろし「今日は千葉の伊勢エビを予定していたんだが海が荒れてて。刺し身は鮪と鰺、それに鯛で勘弁な。その代わり旨い干物を用意してるから」。珍しく弁解つきの低姿勢だ。<サブちゃん後遺症かな>と遠野が失笑していると「おじさん!鬼平が文化功労賞ですってね」と梶谷。

この一言で親爺が甦った。「さすが“おまさちゃん”。社台の準確定申告にも驚いたが歌舞伎や吉右衛門のことも知っているとは嬉しいねぇ。芸人の鑑だよ吉右衛門は。芸一筋――。こうでなくっちゃ」。表情も一変して「八海山」を注いだ。「おじさんもどうぞ!」と梶谷。ソツがない。

「歌舞伎といえば、この間の“おまさちゃん”には俺もビックリだよ。皆は気付いてないかも知れんが、例の“国難突破解散”話の時『仕事人内閣とか見得を切ってたけど、とんだ茶番ですよね。幕(国会)は開いてないし…』って批難したろ!そんな言い回しがサラッと出るんだから」

「そうか!見得を切るも茶番(劇)も、それに幕も歌舞伎に関係してるもんな」。親爺がフムフムてな感じでうなづくと「それ面白い。梶谷さん凄いですね」と横山。聞いた刈田は「バカ!感心してる場合か。俺も含めてだが編集の奴が気がつかんでどうする」と叱責。当日不在だった下川は黙って焼酎を飲んでいる。

じっと甘方のことを考えていた井尻が口を開いた。「ところで、なぜ茶番とか茶番劇って言うかは知ってるよな」。返事は聞こえてこない。当然ながら梶谷に答える気持ちは“さらさら”なさそうだ。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。