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競馬コラム

心地好い居酒屋

2017年09月26日(火)更新

心地好い居酒屋:第28話

親爺と2~3人の板前と仲居で切り盛りする「頑鉄」と違って首都圏に22もの店舗を展開している「完庶処」には当然ながら“決算”があって、その決算月が9月。

さすがに阿部秘書も9月の金曜日だけは身動きがとれないらしく、前回8月末の飲み会では「勝手言って申し訳ありませんが次回は10月最初の金曜日で」と頭を下げ帰って行った。

その時は親爺も遠野も「お疲れさん」と労り<仕方ないか>と軽く頷いたものだが、初めて会った4月から、毎月一緒に飲むのが定例になり、極めて楽しい時間を過ごしていただけに、一月以上開くと寂しくもある。

井尻からの誘いと頼みもあり、9月25日(月曜日)に「頑鉄」に顔を出すと、縁台に居た親爺が立ち上がり、嬉しそうな顔をして一緒に中へ向かったが「最初の金曜日ったって来月は6日だもんなぁ~。まだ、しばらくは京子ちゃん来ないんだよね」。娘の里帰りが遅くなったようなもの悲しい口ぶり。続けて「そんな訳で今日は『得月』は出さないからその積もりでいてよ」「“おまさちゃん”は来るのに?」。遠野が冷やかす。

「悩んだけどね。でも今は2本しかないし、出す以上はケチれないし…。やはり6日まで取っとくよ。もちろん、酒屋には『入ったら5本でも10本でも回せ』と頼んでるけど」親爺にすれば北朝鮮のミサイルや国会解散より二人の美女に心ゆくまで「得月」を飲んでもらう方が問題。かなり古いが井上陽水の“傘がない”の心境なのだ。

「ところで禁煙デーはずっと続ける積もり?知らんぷりして禁煙デーの看板は外したら?あえて“喫煙自由”なんて喧伝する必要はないけど、半年も経ったことだし、常連さんもおおよその事情は分かってるだろう」。「洗心」を飲み、エイの煮こごり(お通し)に箸をつけながら訊く。

「そうなんだ。いや、とのさんには申し訳ないが、国や都が自宅や自家用車の中まで禁煙が望ましい、なんて言い出しただろ。腹が立って腹が立って。自分ちの生活にまで、お上が土足で上がってくるなんて冗談じゃねぇよ」

<思ってた通りだ>と親爺の反骨心に遠野が微笑みながら「オレと一緒の席で喫う奴はいないし、オレのことは気にしないで」と念を押す。

「ま、とりあえず来月から看板だけ外して様子を見るよ」「そうしてくれた方が嬉しいね。止めて分かったけど、オレは受動喫煙より自動車の排ガスの方がよっぽど悪いと感じてるんだ」。阿吽の呼吸というか、お互いの腹の内が分かり合えるからこそ成り立つ会話であろう。

7時ちょっと前に新しい客が来て、続いて下川を除く「ザッツ」の連中が「遅くなりました」の声とともに入ってきた。新客は仲居に任せ「タイミングがいいねぇ。外で見てたの」と皮肉りながら、親爺が刺し身の盛り合わせを運んできた。「今日はカジキ(まぐろ)が旨いよ。生(冷凍ではない)があったんだ」。

いつもの酒が行き渡る前に刈田が憤慨の言葉を吐いた。「Jアラートなんてのを鳴らし、子供だましの避難訓練をさせ、危機感を煽った挙げ句の解散なんて狂ってますよ。モリ、カケ隠しに決まってます」。<そういえば、別部の一件でも最も興奮していたのは刈田だったな>と遠野は懐かしむ。

うんうんと頷きながら井尻はビールを注ぎ、横山は焼酎のロックを二人分作っている。遠野は「どうぞ“おまさちゃん”」と声をかけ「洗心」を傾ける。刈田が喋ってる間にお通しを配り終わった親爺もちゃっかり座り込み、梶谷の酌で上機嫌だ。

全員がグラスを手にしたのを見計らって珍しく梶谷が口を開いた。「ホラ、内閣改造した時に“仕事人内閣”なんて見得を切ってたけど、とんだ茶番ですよね。幕(国会)は開いてないし全く仕事してないもん。あの長州人は狡くて卑怯で口先人間を証明しちゃいましたね。こういう時は彦次郎さんみたいな本当の仕事人の出番でしょ。ねっ!おじさん」とニッコリ。思わず井尻はビールを吹き出しそうになり、慌てて口を抑えた。

残り二人は「彦次郎?誰ですか、それ?」。“梅雨の湯豆腐”を知る由もなく、グラスの手を止めて親爺を見る。「いや…。その…」。うろたえる親爺を楽しみながら「この間、おじさんが人相の悪い怖そうな人と親しく話してたのを見ちゃって…。訊いたら彦次郎という強きを挫く一匹狼のヤクザ屋さんなんですって」。オチまでつけているからビックリだ。

成り行きを心配していた井尻はホッとして「ま、冗談はともかく、アベは危険だね。言い出すとキリがないけど、あの<人づくり革命>なんてのは最悪。幼稚園から『教育勅語』を暗誦できるような人間を作るのが理想なんだろ。いわば国家に忠誠で権力に服従する<人づくり>を目指すってこと。そう思いません?遠野先輩」。例の飲み会に触れられたくないのか、話題を再び解散→選挙に戻した。

「そうならんように井尻達がしっかり監視してくれんと。今でこそメディアも“モリ、カケ隠し”“大義なき解散”なんて批判してるけど、いつまで続けられるかが問題だな」。遠野が答えたところに太刀魚の塩焼きが4皿。「切り身は4人分しかとれなかったから適当に食べてよ」と弁解しつつ「ほれ、横ちゃん遠慮しないで」と一皿、横山に勧める。

「横山クンさあ。親爺さんは選挙より何より秋のGⅠが問題なんだよ。なっ親爺」「へへっ。選挙は先のことだし、とりあえずは今週のスプリンターズSだな」。その通りに買う訳じゃないが参考にはしている。

訊かれた横山は太刀魚に箸をつける間もなく解説を始めた。「昨日(日曜)は東西ともに勝ったのはキャロットでしたが、スプリンターズは社台系が少ないだけに、現時点での注目は和美名義のメラグラーナですね。後は社台F生産のレッドファルクス。ノーザンFの3歳馬モンドキャンノ。まずはこの3頭から検討してみて下さい」。スラスラッと名前が出た。メモってないだけに親爺、覚えているかどうかも問題だ。


【著者プロフィール:源田威一郎】
大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。

斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。

競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。