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競馬コラム

心地好い居酒屋

2018年12月12日(水)更新

心地好い居酒屋:第58話

異常気象が続いてはいるが、24節気の前後だけはアリバイ作りのように、ピッタリ季節感を表してくれる。先月22日の「小雪」の頃はそこそこに寒く、翌23日の「完庶処」での飲み会は熱燗から始まった。しかし、その後は随所で夏日続出という暖かさで世の中を驚かせた。

そして「大雪」の今月7日以降は北海道を中心に東北、北陸で本格的な雪を降らせ、寒さも一入(ひとしお)。この日(10日・月曜日)も家から出るのが億劫になるほどの寒さだったが、「TMC」の連中と飲むのも今年最後。増して自分と会うのを楽しみにしている横山の事を思うと無碍にはできない。そういえば先日、井尻も“忘年の交”なんて泣かせるような言葉で遠野を喜ばせたし、この年になって、まだ人から必要とされるってのは感謝すべきだろう。旨い酒と魚に気心の知れた仲間達……。いざ出掛ける頃には浮き浮きした気分になっていた。

仕事を離れたら後はプライベート――。最近はそんな風潮が目立つが、さすが年末。やはり忘年会だけは健在なようで、遠野が到着した7時前には「頑鉄」も、ほぼ満席状態。例によって入って左隅にはゲーム会社の連中が5人陣取っている。軽く黙礼を交わし指定席に向かった。すでに「TMC」の連中は揃っていて珍しく下川も参加、「お疲れさま」の言葉で迎えられた。

遠野が下川、梶谷の後ろを回り席に着こうとすると梶谷が甲斐甲斐しくコートをハンガーにかけてくれた。斜め前の刈田は素知らぬ態でグラスを口にしたが、羨望の様子がありあり。遠野が腰を下ろすと同時に梶谷が「熱燗でいいですか」。「うん。皆んなは?」「私も熱燗を」と答えると横山も熱燗を願い出た。刈田と下川は焼酎(黒霧島)のお湯割り続行で井尻はもちろん最初からビールだ。

今までお通しだけだったようで板わさと小鉢が残っている。親爺は遠野が入って来た時から準備してたようでお通しと一緒に『千寿』の熱燗を持ってきた。「いらっしゃい。板わさはともかく、この小鉢は吉野が作ったやつで、味見してみてよ」「ふ~ん」。じっと見ていた遠野は箸で摘まみ口に入れた。噛むとコリコリと音がする。「いけるよ。チーズと干し大根の相性もなかなかじゃない」と褒め、梶谷に猪口を向け酌を催促する。「“燻りがっこ”といって干し大根を燻り、クリームチーズで和えた秋田の名物でね」「吉野君も頑張ってるじゃん。これなら『含鉄』もまだまだ健在ってことだな」

「そうそう。おじさんちが無くなったら私なんてなんのために築地まで働きにきてるか分かんなくなりますよ」とは梶谷。「そうだよね。ボーナスはゼロで給料は上がらず、取材費まで削られる一方じゃ、せめて飲食ぐらいの楽しみはなくっちゃ」。“梶谷命”の刈田が話題を引き継いだ。

取材経費やタクシー代など使ってる奴は使ってるのを知ってる経理の梶谷だが、こんな席で暴露するほど軽い人間じゃない。「そうですねぇ。外部のライターさんも減らされたみたいだし、たまぁにですが、電話での問い合わせもあって、対応するのが辛くて…」。神妙な口振りと顔付きになりながらも親爺の酌を受け熱燗に一口つけ、間を置いて一気に飲み込んだ。

この日の刺し身は鮪は当然で、鮃に北寄貝に槍烏賊と北の幸がいっぱい。特に全員を感激させたのは烏賊。まさしく“烏賊ソーメン”と呼ぶにふさわしい見事な切り口と切揃えだ。「板長?」訊くと「いや、全部吉野が捌いた」と。「もともと(呉下の)阿蒙とは思っちゃいなかったが、それにしても腕を上げたなぁ。刮目だよ刮目。大安心だな」。遠野の言葉に親爺も満更じゃなさそうで、梶谷に酌をねだる。ところが横山は話に参加せず、手酌で注いでは飲み、飲んでは注ぐを繰り返し、たまに刺し身を摘まんでいる。

「横山君どうした?元気ないじゃないか」。遠野が声を掛けると、待ってましたとばかりに「ウチの金山さんには腹が立って腹が立って」「運動部長の金山?」「はい。聞いて下さいよ!」。あまりの剣幕に全員の耳目が横山に集まった。

「以前にもあったんですが、昨日もメーンが終わった後に電話してきて『香港マイルの馬券を買ってくれ』と。こっちは阪神の最終も買う積もりで、それどころじゃないし、一応は断ったんですが『じゃあペルシアンナイトからの馬券を呑むか。買っても買わなくてもいいぞ』。脅迫みたいなもんです」。ここまで言うと少しは落ち着いたのか、今度は酒を味わうようにして飲み、鮪に山葵(わさび)を載せ口に入れた。

「そこまで言われたんじゃ買うしかないか」と井尻。「ええ。1万円を限度で仕方なく。断り切れなかった自分も情けないのですが、今日の態度にビックリ。すれ違っても会っても知らんぷり。お礼どころか立て替えた金を返す素振りさえなし…ですから」。「で、どうなった」と一番端の下川が興味津々で訊く。

「前みたいに恍(とぼ)けられても癪だから帰る前に請求に行きました」「じゃあ、とりあえずは返したんだ」。<良かったね>てな感じで刈田が慰めた。しかし、横山は納得してない。「前の時は『ごめんごめん。うっかりしてた』で返したのは3日か4日後。今日は『追い込みがきついなぁ。サラ金かお前は』『最後まで馬券買いを断っていれば損しなくて済んだのに』ですから」。これじゃあ怒るのも無理はない。「ひでぇ奴だな。ギャンブルをやる資格なしだな。お雅ちゃんだって、馬券に乗る時は前もって金を渡してくれるのに」「あら!おじさん『お雅ちゃんだって』というのはどういう“だって”ですか」。拗ねた振りをして空のお銚子を振った。

「すんません。私の言葉遣いが間違っていました」。ペコリと禿げ頭を下げ、ポンポンと叩き「お~い。熱燗2本大至急な」と。「それと唐墨も」の一言でニッコリの梶谷。「でもさぁ。ヨーロッパには『食べる前のパン代は払いやすい』っていう諺があるけどギャンブルもそうですよね。結局、金山さんなんてのは金銭に執着するがあまり、自分自身の品性をを落としているんですよ。早く気づいてラッキーじゃん。そう思って付き合えば失敗はしないでしょ」。インチキ伝票を知悉している梶谷の言葉だけに説得力がある。

「有間記念」はレイデオロと決めてはいるが、この調子では検討は無理そう。「ジャパンC」の配当金二人分を、そのまま預かってはいるだけに直前には知らせなくてはなるまい。

源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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