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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年09月16日(月)更新

心地好い居酒屋:第74話

台風一過の13日、「頑鉄」に向かいつつ、思わず百人一首の一句が頭に浮かんだ。 〽夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く〽―。 「頑鉄」の古風な家屋、台風前の猛烈な残暑とは一変、晩秋に近い冷たさが、そんな気持ちにさせたのだ。。

玄関横の縁台では親爺が気持ち良さげに煙草をくゆらせていた。「今日はしのぎやすいし、煙草も旨いだろ」。遠野が声をかけると「吸えなくなったとのさんには悪いけど、煙草の旨さと心地良さは吸ったもんじゃねぇと分からんよな」と言い、最後の一服を大きく吸い込むとふぅ~っと細長く白い煙を噴き出し、残りを灰皿に捨てると「中に入ろう」。

親爺が外だからてっきり客は居ないと思っていたのだが、すでに先客3人が真ん中の席で、刺し身やら何やらを前に焼酎とビールで盛り上がっていた。「河野がどったら…進次郎が…」と。どうやら新内閣の品定めをしているようだ。窓際の席には「予約」の札が。親爺が「例のゲーム屋」と説明しながらカウンターに向かい、腰を下ろした。

「準備万端だよ。何せ京子ちゃんと会うのは約2ヶ月振りだもんな。こんなに空いたのは初めてじゃないか」。ソワソワしながら焙じ茶を啜った。盆休みに会ったことは内緒だけに「そうだな。俺が入院してた一昨年の冬がこの程度だったかな」。素知らぬ態で遠野が応じると「何言ってんの!あの頃は、まだ京子ちゃんはきてない。その年の4月からだよ。ついでに言っとくけど、おまさちゃんは3年前の10月の始めだからな」とピシャリ!。「畏れ入りました」。畏敬の念で頭を下げるしかない。

「とっておきの『得月』を2本空けたし、そりゃあ覚えてるさ」「そうそう、その『得月』だけど大丈夫?」「今日は3本しかないが、あと最低5本は確保しているから」。“任せなさい”とばかりに胸を叩いた。自慢気ではあるが、“まだ?”。焦り気味に時計を見る。

7時を回っている。「ボツボツかな」と呟きながら入り口を振り返り「あの(先客の)3人さんも憤慨してたけど、前回以上の“退化一層”内閣だな。困ったもんだ」と。「確かに」。遠野は答え、茄子のぬか漬けを摘まみ、焙じ茶で流し込んだ。「何が酷いったって萩生田の文科大臣だな。加計問題が蒸し返されるのは分かってるのに、敢えて抜擢だから国民をバカにし切っている、いや舐めてるとしか言いようがないな」「マスコミも韓国叩きは懸命だが、自分の国のことに関しては批判精神はほぼゼロだし…」。親爺も嘆き、急にカウンター近辺の空気が沈んだ。

そんな暗い雰囲気を破ったのが玄関。引き戸の音に続き「お邪魔しま~す」。阿部秘書と梶谷が一緒に到着したのだ。先客の席は一瞬、静寂に包まれ“ほう~”てな感じでお嬢達を目で追った。この瞬間は常に“優越感”を覚えるのだから<男って奴は…>だ。親爺は駆けるかのような勢いで迎えに行き「いらっしゃい!久し振り!元気だった?」。もちろん話しかけた相手は阿部秘書だ。矢継ぎ早の問いかけに「ご無沙汰続きで申し訳ありません」。愛らしい笑顔で返した。親爺もニッコリだ。

遅くなるという井尻は放っておいて、それぞれの席に着くと同時に親爺が「得月」を持ってきた。「ヤッター!。そうかぁ。もう9月も半ばなんですよね」。「得月」が9月限定出荷で、「頑鉄」に来た時、初めて飲んだことはしっかり覚えている梶谷がハシャグ。親爺も嬉しそうだ。その親爺を含め4人のグラスが満たされた時には漬け物の盛り合わせとお通しが揃っていた。グジ(甘鯛)の昆布締めだ。脇には出始めのカボスが添えられている。

2人が早速カボスを絞り一切れ摘まみ口に入れた。「昆布とカボスの香りが食欲をそそるし、魚はいい具合に歯ごたえがあって最高」と梶谷。阿部秘書は頷きながら「魚の臭みと水っぽさも消えてるしね」。「大きな声じゃ言えないが、この席の料理は刺し身以外は吉野君じゃなく、親爺自ら包丁を握り、この昆布締めなんて2日がかりらしいよ」。遠野が値打ちを付けると「へへっ。ちょっぴり照れるけど京子ちゃんやおまさちゃんの笑顔を見るのが楽しみでね」。親爺が一番喜んでいる。

「ところで遠野さん達は何喋っていたの」と梶谷。「新内閣についてだけど、とのさん曰く『一番酷くて許せないのは萩生田の文科大臣』だって」。黙って冷酒を飲んでいる遠野に変わって親爺が答えた。と、阿部秘書が「有村も『あの長州人はやり放題。今後の教育行政はどうなるのかね』と心配していました」と。

遠野にすれば、<この話題は飲み会の話じゃなく親爺と2人の暇つぶし>の積もりだったのだが、阿部秘書が乗ってきた以上、途中で止める訳にはいかない。「有村社長がねぇ…。加計学園の際には『4月開校でオシリを切って』とか言ったらしいが、今度は大学受験に英語の民間試験を導入、参考にするってんだろ。大学も高校生も内容をよく把握してない状況で来年から始める予定とか。萩生田なら役人に圧をかけ“オシリを切って”実行するかもな。それが目的での文科大臣じゃないの」。喋ってるウチに腹が立ったのかグラスの酒を一気に飲み干した。

「民間てのは、やはり“お仲間優遇”ですか?」「有村社長や京子ちゃんの言う通りで、いずれ利権が絡むでしょ。そのうち、国家試験の問題にも民間が関与したりして…。隠居老人の取り越し苦労ならそれにこしたことはないけど…。妄想であってほしいよ。あ~あ」 「溜め息なんてらしくないよ。今、毛蟹をほぐしているところだし、その前にほら、食って!これ」。見ると衣被(きぬかつぎ)が一つの器に行儀よく盛られている。「今日は中秋の名月だけど“芋名月”でもあるからね」。親爺の能書きに「あら可愛い。部屋では見えないから、この衣被を満月に見立てるってことね」。梶谷がフンフンと頷きながら箸を刺してパクリ。「塩加減もいいし美味しいお月さま。遠野さんも召し上がれ」と。例の舌チョロをされ、思わず苦笑いだ。

気持ちを切り替え、その後の別部の状況を聞こうと「京子ちゃんさぁ…」と言ったところに玄関が開き「遅くなりました」と詫びつつ井尻が入って来、続けて「綺麗な満月が出てますよ」。すると阿部秘書がニコッとして口を開いた。

「〽この世をば わが世とぞ思ふ望月の 欠けたることも 無しと思へば〽。さて詠み人は誰でしょうか」。まさか阿部秘書が…。女性の新たな一面を垣間見た。  井尻は脱いだ靴を持ったままキョトンとしていたが、その井尻に向け、甘方の現状を熟知してない親爺が「長州人かお宅の局長どっちかだな」。面白い飲み会になりそうだ。




源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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