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競馬コラム

心地好い居酒屋

2019年03月06日(水)更新

心地好い居酒屋:第62話

そぼ降る雨の中、やっとの思いで「頑鉄」に辿り着き、そっとドアを開けると、果たせるかな、すでに横山は到着、指定席に座り込んで無心に何か読んでいた。遠野に気付いた親爺に向け、人差し指を立てながらこっそり近寄り、テーブルを覗くと、即売のスポーツ紙の上に「週間競馬ブック」を置き、交互に目を通している。


「熱心だな」。後ろから声を掛けるとビクッと肩を振るわせ振り向いた。「あ!お久し振りです」。立ち上がろうとするのを制し、自らは席を回って正面に座った。「ご無沙汰。元気そうだね」。いつも通りの無難な挨拶をしたのだが「ええ。元気いっぱいです」とニコニコしながら広げていた新聞と週刊誌をたたみ、バッグに仕舞った。それが合図だったかのように親爺が四合瓶をドンと置いた。「横ちゃんがな、これを中心に『今日は私に任せていただいていいですか』なんて言ってね」。北海道の酒・「大吟醸・男山」である。


「何があったか知らんが陽気で豪気だね。いずれにせよ上機嫌なのは結構。じゃあ折角だから早速いただかこうか」。遠野が納得すると、親爺は「あいよ。じゃあとりあえず箸休めにでも」と言い赤かぶの酢漬け、生姜と昆布の佃煮を持ってきた。もちろんグラスは3つ。


親爺が3人のグラスを満たした後、「横ちゃん『弥生賞』で儲かったらしいんだ」と。「ふ~ん。それえはお目出度う。ゴチで言うのも失礼かも知れんが“勝った”からと言って振る舞ってたんじゃキリがないぞ。負けた時に返してくれる奴はいないんだし」「あ、それはもう…遠野さんや親爺さんに対して失礼は重々承知していますが、今回だけは、と思って。申し訳ありません」。ご馳走する側が平謝りだ。


「ごめんごめん。そんな積もりじゃないんだ。ただ、余り浮かれ、自慢話になったら奢られる方もどう思うかなって。もっとも“取った取った”と大はしゃぎ、何もしない奴は嫌われるけど」「そうそう、あの珍味屋の大谷さんなんてのは当たり馬券をコピーして持ち歩き、俺や客に自慢するばっかし。もちろん出す物は唾も出さねぇんだから」


親爺の話に横山は「へぇ~。そんな人居るんですか」と目をパチクリ。赤かぶに箸を付け、冷酒をチョビっと飲んだ。心の平静さを取り戻したようだ。


「で、ゴチの理由は?大儲けしたのは確実だろうが、それだけじゃないだろ」と遠野。「はい。簡単に言うと『弥生賞』の大当たりは遠野さんのお陰でもあるんです」「よせよ。俺は人の馬券にいちいち口は出さないし、第一しばらく会ってないじゃないか」。煽(おだ)てにはも乗らねぇよ、って感じで残っていた酒を飲み親爺にグラスを差し出した。


「だって“メイショウ”さんと“三愛会”、そしてその幹事みたいな人が三嶋牧場の社長って教えてくれたでしょ!。で、まぁディープ産駒で三嶋牧場生産の“メイショウ”なら走るんじゃないかと思って…。それに前日には阪神『チューリップ賞』に池添が三嶋牧場生産の“メイショウ”(ショウブ)に乗り、その池添が翌日には中山で“テンゲン”でしょ。自分なりに<勝負になる>とピンときましてね」


「それで“テンゲン”に◎を打ったのか」「ご覧になっていただきました?」。横山は嬉しそうにグラスを取り、今度は残っていた酒を飲み干した。


「◎はともかくシュバルツリーゼの○は凄いよ」。遠野が改めて感心すると「それも遠野さんのお陰です。『堀厩舎所属で社台の休み明けには要注意』と前から言われてましたし、増して鞍上は社台お気に入りの石橋でしたから…」。ここまで説明されれば素直に喜んだ方が良さそうだ。親爺はウンウンと頷きながら立ち上がり、暫くしてお通しを2個持って帰ってきた。中身は鮪のやまかけだ。ヅケにしていたのか鮪の赤と山芋の白が美しい。“紅白”でお祝いの意を表しているのかも。境目には緑の山葵が乗っかっている。「ボツボツお雅ちゃん達も来るだろうし…」と親爺。


「いつもながら見た目も美味しそうな料理ばかりで感謝感激です」。料理はいつもながらだが、横山の口はいつも以上に滑らかだ。「当たったのもちろんですが、もっと嬉しかったのは金山部長をギャフンと言わしたことです」。横山の言葉に遠野は“ん?”てな感じで鮪を摘まんだ箸を止め、横山を見上げた。


「土曜日に新聞を出した後、金山さんが寄ってきて『紙面の信用度に関わる。恥ずかしい印は付けるな!メイショウテンゲンなんて絶対こないぞ。こんな予想を続けるようなら予想欄から外すよう梯に指示するからな』とケチをつけ、おまけに『カントルと幾ら“アトサキ”してもいい。テンゲンの単勝なら1万でも10万でも呑んでも構わんぞ』と。自分の反論も聞かずさっさと帰っちゃいましてね」。一気に喋り、親爺の酌を受けた。


思わぬ展開にさすがの遠野も真面目に耳を傾けた。「で、まぁ今日自分から席に行き『単勝3910円ですけど』と言ったら『お目出度う!良かったな。梯に局長賞を申請させるよ』で終わりです」「それで引き下がったのか」。遠野が不興気味に問い質すと「いえ、『ところで部長自信のカントルは何着でした?“アトサキ”はともかく単勝は1万円分で結構です』と」。「奴の反応は?」「目を泳がせながら『土曜の話を本気にしてたのか?ならゴメン。叱咤激励の積もりだったし、誤解があったのなら勘弁な。この通りだ』と頭を下げましてね」と言い、ニコッとした時に残りの連中が入ってきた。


一番前を歩いてきたのは何と下川で、席の前に来るなり「横山!チャンと遠野さんに報告したか」「ええ、粗方(あらかた)」。横山が答えると「遠野さん、今日の横山はカッコ良かったですよ」「金山に頭を下げさせたんだってな」と応じ、皆に上がるよう促した。「それだけじゃなく『部長!呑み行為は違法ですから競馬記者として金を寄越せとは言いませんが“吐いた唾は飲めない”ことだけは覚えておいて下さい』とピシャリですから」。聞いてた親爺は「文太は“吐いた唾飲まんとけよ”だったけどな」と呟き、カウンターに向かって料理を催促し「お雅ちゃんには特大の“焼きはま”(蛤)を用意しているからね」。


普段は口数の少ない下川が熱く語り、金山の惨状に溜飲を下げたのだから、この連中は信頼しあってるのだろう。井尻のためにもホッとした。これなら逆恨みでの仕打ちにも耐えられるはず。親爺を含め6人全員にそれぞれ飲み物が揃ったところに仲居がお通しを、親爺が蓋をした小鉢を5個持ってきて「いいシロウオが入った。中でピチピチ跳ねてるから汁が飛ばないよう手で押さえて食ってね」「ほぅ~。躍り食いとは珍しい。これも横ちゃんのおかげか」。遠野の言葉で楽しい飲み会が始まった。  


源田威一郎

GENDA ICHIRO

大学卒業後、専門紙、国会議員秘書を経て夕刊紙に勤務。競馬、麻雀等、ギャンブル面や娯楽部門を担当し、後にそれら担当部門の編集局長を務める。
斬新な取材方法、革新的な紙面造りの陣頭指揮をとり、競馬・娯楽ファン、関係マスコミに多大な影響を与えた。
競馬JAPANの主宰・清水成駿とは35年来の付き合い、馬主、調教師をはじめ懇意にする関係者も数多い。一線を退いた現在も、彼の豊富な人脈、鋭い見識を頼り、アドバイスを求める関係者は後を絶たない。

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